★日本のジャズ・ヴォーカル界を代表するヴェテラン・ディーヴァ:伊藤君子(1946年香川県小豆島町生まれ)の、3つの小編成セッション(第1は林正樹-p、須川崇志-b、スティーヴ・ガッド-dsのトリオとの共演、第2は後藤浩二-pとのデュオ、以上2つは最新録音、第3は野力奏一-key/p/elpやマイケル・ブレッカー-tsらのコンボと組んだ1995年NY録音)をまとめた、アラン&マリリン・バーグマン夫妻作詞のスタンダード曲群をレパートリーとするニュー・アルバム。
★艶と潤いに富む落ち着いた中音域の体温ある端麗ヴォイスが、歌詞とメロディーを大切にし一つ一つの言葉を丁寧に噛み締める感じの、繊細かつ抒情的であり同時にジャズ・ヴォーカルならではのグルーヴィーさやブルースの旨味も端々に巧まず覗かせた、英語の発音も実に流暢でこなれているハートウォーミングな和み型の優しい演唱を端正そして丹念に綴って、ドラマティックで感動的な歌世界を創出し、哀愁とテンダネス溢れるピアノ他インスト陣のセンシティヴ&スインギーなサポートも、鮮やかにツボにハマッた、何より主役ヴォーカルの熟成感と清新味を兼ね備えた歌声に爽やかに胸躍らされ、ホッと安堵させられる密度の濃いさすがの練達内容。
★一貫してバラードを基調としたインティメイトなリラクゼーション溢れる行き方が穏やかに続き、バック勢のデリケートな機微を感じさせる妙演もムード満点に際立つ中で、伊藤(vo)の、一声一声に丹誠のこもった柔和でいて切実さも滲む親しみやすくも多彩なバラード表現が時にしっとりと、時に力強く冴え渡って素晴らしい。
→基本はリリカル派の正統スタイルを旨としており、そのソフト&マイルドな温もりと母性的包容力に満ちたニュアンス細かい節回しに心地よく魅了されるが、随所で張りを利かせ声量の豊かさを強調した"静かなスロー・シャウト"とも云うべきパワフルなアプローチも織り交ぜて、切々たる迫力や昂揚感をも齎す、という、バラードと云えどメリハリ十二分のそうした半作劇的ストーリーテラーぶりは全く見事、そして全く揺るがぬ確固とした安定を示しており、林(p)や後藤(p)の精細なプレイもそこかしこに煌めくが伊藤の前ではやや霞んでしまうという、そういった伊藤の理屈を越えた圧倒的存在感が一人勝ちしている印象だ。降参。
01. The Way We Were 追憶 (Marvin Hamlisch)
02. Like A Lover (Michel Legrand)
03. How Do You Keep The Music Playing? (Michel Legrand)
04. The Island (Ivan Lins)
05. Alone In The World (Jerry Goldsmith)
06. The Windmills Of Your Mind 風のささやき (Michel Legrand)
07. It Might Be You (Dave Grusin)
08. What Are You Doing The Rest Of Your Life? (Michel Legrand)
09. You Must Believe In Spring (Michel Legrand)
10. So Many Stars (Sergio Mendes)
伊藤 君子 (vocal)
*01, 03, 06:
林 正樹(piano, arrangement)
須川 崇志 (bass)
スティーヴ・ガッド (drums)
*02, 04, 07, 09:
後藤 浩二 (piano, arrangement)
*05, 08, 10:
野力 奏一 (piano, electric piano, keyboard, arrangement)
ウィル・リー (electric bass)
エディ・ゴメス (bass)
スティーヴ・ガッド (drums)
ジョン・トロペイ (guitar)
ラルフ・マクドナルド (percussion)
マイケル・ブレッカー (tenor saxophone on 05)
Unknown (flute on 08)
他
2025年日本作品
レーベル:
Pony Canyon
御予約商品
2025年4月23日発売予定
国内制作CD