★橋爪亮督(ts)のグループなどでユニークな辣腕を揮ってきた、人気個性派ギターの市野元彦(1968年兵庫県神戸市生まれ)をリーダーとし、市野とは長年のコラボ仲間であるアルトサックスの津上研太&ドラムの外山明が参画したこの変則トリオ・プロジェクト:melodiesは、2023年に活動をスタートさせ、精力的にライヴを行なってきたが、本盤は、台湾ツアー時などに共演していたテナーサックスの謝明諺=シェ・ミンイェン(台湾のコンテンポラリー・ミュージック・シーンを牽引しているとも云われる斯界の重要人物の一人)を大半のトラックでゲストに迎えた4人体制を基本とする、彼らのファースト・アルバム。曲はすべて市野のオリジナル。
★メロウ・テンダーかつブルージーな潤んだギターの調べに導かれながら、2サックスのおおらかなスピリチュアル・ブロウが悠然たる旨口の魅力を放ち、切れ味シャープでいて摺り足でトグロを巻くようでもあるドラムの鳴動もグルーヴ効果+サスペンス効果充分に絡んで来、丹念そしてマイルドに哀愁を歌い上げるギターの厚みとキレある立ち働きも何げにセンシティヴにまとめ役を担った、途中一部にフリー・インプロ交感っぽい転回もあるものの大筋では穏やかな抒情指向の行き方が基調を成して、心地よく和ませてくれるニュアンスに富んだ妙演内容。
★メロディーの美や詩的情緒性とゆったりウネり進み揺れ波打つスイング感、をあくまで大切にした、一種のスピリチュアル・ジャズと云えそうな優しくまろやかでブルース・フィーリングにも事欠かぬリリカル・ファンタジック快演が、じっくりと繊細・端正に推し進められてゆき、牧歌的だったり瞑想的だったりと全体のサウンド・イメージを決定づける市野(g)の、柔和にしてどこか物憂いモノトーン風のそぞろ弾き(→幾分アンビエント音響派っぽい趣も醸し出される)が作曲面も含めて終始揺るがぬキモとなっている一方、津上(as)と謝明諺(ts)の吹鳴がこれに華やかな彩りを加え、外山(ds)の遊撃攻勢が空間底部に迫真のスリルや震動とノリを齎す、という、各人がそれぞれハマるべきところへ鮮やかにハマりきった、バラード・コンセプトを概ねメインとするさりげなく高密度な流れが創出されていて見事。
★市野(g)の、コンテンポラリー・スタイルを身上としてアメリカーナ系辺りとはまた違った現代和流の半内省吟遊旅唄とも云うべき丸み&温もりを帯びた情景を描き出す、テンダー・メディテイティヴ即興が何とも幽玄深い妙味を揮っている他、津上(as)のソフト&クールな洒脱さある涼風のそよ吹きっぽい滑らかプレイや、謝明諺(ts)のモード系ハード・バップの正統語法を根幹に据えながら情魂味こってりに程好く甘美なメランコリーを映し出すドライヴ感も充分の唸り節、といった辺りがまた抜群に興趣豊かだったりと、道程は極めて充実した聴きどころの目白押し。
1. Conversation And Confession (6:37)
2. First Dance (6:27)
3. Peace (4:15)
4. Elephant Ride (8:09)
5. Spring (5:45)
6. Solid/Liquid (9:38)
7. Tiny Little Waltz (6:36)
8. Nice People (7:27)
*all compositions by Motohiko Ichino
市野 元彦 Motohiko Ichino (guitar except 1, 4) (baritone guitar on 1, 4)
津上 研太 Kenta Tsugami (alto saxophone)
謝 明諺 Minyen Hsieh シェ・ミンイェン (tenor saxophone on 1, 2, 3, 4, 6, 8)
外山 明 Akira Sotoyama (drums)
2024年6月24日東京都杉並区荻窪のvelvetsun録音
*レコーディング/ミックス/マスタリング:松下 真也(Piccolo Audio Works)
レーベル:
Ammonite Musique ウルトラ・ヴァイヴ (Ultra-Vybe)
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