豊かなキャリアの中でリー・コニッツ、メル・トーメ、ベニー・ゴルソン、ジェイムズ・ムーディー、ハーブ・ゲラー他、数々のビッグ・ネーム達と共演を重ねてきた、現在は米オレゴン州ポートランドを主たる拠点として(アリゾナ方面の人脈ともゆかりあり?)活動している、カナダ出身と思しきヴェテラン・ベーシスト:トム・ウェイクリングの、最近レギュラー的に率いているトランペット入りカルテットによる米アリゾナ州スコッツデールでのライヴ編。人肌の温もりとコク深い旨味に溢れ、勢いよく鋭敏に飛び出すドライヴ力も満点な肉太重厚ベースの、懐広げで包容力を多分に感じさせるウネり波打ち躍動が、他のメンバーに背後から頼もしく発破をかける風な、パワフルにして和やかさあるダイナミック・スイングぶりで全体をシャキシャキとリードする中、"ハード・バップの化身"然とした華やかなトランペットや、アーシー&スクエアーなカッチリした堅牢げピアノらがきららかに見せ場を飾り、精確律動的でいて変幻に意表を衝くことも忘れない芸達者なドラムも、ベースと上手くシンクロしつつグルーヴ感を高めた、全編モダン・ジャズ黄金時代を思わせる単純明快ストレートアヘッド・ジャズの鑑たる順風満帆の進撃が続いて、スカッと爽やかに胸躍らせる会心打内容。歌心とスイング感に潔く重点を絞り、巧まずしてブルース・センスやバピッシュ魂も豊富に備わった、徹頭徹尾伝統志向・娯楽活劇指向なワンホーン・ハード・バップの理想形とも云うべき歯切れよく風通しもよさげで開放感ある、そして気さくそうな人情味に富んだメロディック奏演が溌溂&和気あいあいと愉しげに、かつ終始鮮明な輪郭をもって展開してゆき、随所でリーダー:ウェイクリング(b)のソロもフィーチュアされるが、そのプレイはハートウォーミング&スピリチュアルで雄弁なれど決して饒舌になることなく引き際・節度をわきまえた適度に控えめなところがまた好もしく(とは云えバッキング時でもその存在感は結構芳醇に際立っている)、フロントではカーダー(tp,flh)やヴェルサーチ(p)、の血気盛んそうな獅子連がホットでイナセなアドリブ・リレーを演じて、清々しく昂揚させてくれる。カーダー(tp,flh)の、一座の花形役に相応しく眩いばかりの輝かしいスター性と吟醸的バップ精神をみなぎらせた晴れ晴れと大きく歌い、おおらかに躍動する粋な勇み肌の闊達ブロウが、吹き抜ける青嵐の如く映え渡っていて先ずは何より出色で、かたやヴェルサーチ(p)の、スマート&ジェントルに力は八分目で堅実な立ち居振る舞いを見せるもそのうち手癖が出て熱い"ファンキー大会"になってしまう、辺りのちょっと職人気質っぽい芸風もこれまたナイスな好感度(両者ともアリゾナ州のローカル・シーンで活動している模様だが、各々立派に華を成しきっているところ、場は地方であれそういう宝石の転がり様にアメリカ・ジャズ界の層の厚さを実感させられる次第)。このマイナー録音を堂々アルバム化したコリー・ウィーズはさすが偉い(肝の据わった見事な決断力・揺るがぬ信念にウナります)。
01. Swingin' At The Haven
02. Menina Flor
03. Out Of The Past
04. Mambo Inn
05. Lotus Blossom (Strayhorn)
06. Lotus Blossom (Dorham)
07. Watergate Blues
08. The Man I Love
09. Angelica/Purple Gazelle
10. Evidence
Jason Carder (trumpet except 02, 05, 09) (flugelhorn on 02, 05, 09)
Angelo Versace (piano)
Tom Wakeling (double bass)
Dom Moio (drums)
2024年2月25日米アリゾナ州スコットデイル=スコッツデールのRavenscroft Centerでのライヴ録音
レーベル:
Cellar Live
在庫有り
輸入盤・見開き紙ジャケット仕様CD