ドイツ・フリー派ピアノの巨匠:アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ(1938年ドイツのベルリン生まれ)の、ここ凡そ10年来頻繁に活動を共にし、レコーディングの上でも過去デュオ・アルバム2作品やシュリッペンバッハ名義のオーケストラ作品などで息の合ったところを見せてきた、ノルウェーの即興派ドラマー:ダグ・マグヌス(またはマニュス?)・ナルヴェセン(1983年生まれ)、との名コンビによる、今回はまた差し向かいのデュオ・フォーマットでのアルバム3作目。岩石様の硬角質タッチで甘さを排したアブストラクトの極致を示す半記号的パーカッシヴ打撃音をガキゴキ連ねてゆくピアノが厳然とハードコアな気魄を放ち、不気味な生き物の蠢きのようでありその殊の外すばしっこい速射砲撃の中に独特のグルーヴ感を匂わすところもあるドラムのゲリラ・アタック!がまた中々アジな閃きを見せた、全体を通じ両者の打楽器タイプの戦闘的ぶつかり合い〜アクション交感が結構歯切れよく壮快に昂揚気分ならびに生々しいサスペンスを齎す、意外にスカッとした会心打内容。抽象性や破壊力に溢れたダイナミックな妥協なきフリー・インプロ激突が強硬に推し進められてゆき、一触即発の圧倒的緊迫感・起爆感に貫かれたシリアスなやりとりが、しかし「曲」という比較的簡潔な区切りをつけつつ(但しこれが曲の体をちゃんと成しているかどうかと云うとそこらへんの情勢は極めて自由奔放でありちょっと微妙なところ)展開してゆく様は、分かりやすさこそないものの立ち回り〜殺陣の妙味に特化したかのような「音の活劇」めいた面白さがあり、ドラムの全機能をフル稼働させて機略縦横に迫るナルヴェセン(ds)、そしてコワモテな打楽器戦法と半バラード的耽美哀愁描写の両極端をイキイキと往来するシュリッペンバッハ(p)、それぞれのインプロヴァイザーとしての最良の姿が鋭く捉えられていて何げに卓抜だ。シュリッペンバッハ(p)の、ピアノを打楽器の集合体として烈しく騒々しく(けたたましく?)攻勢をかけてくる純度の高い抽象面と、妖しく物憂き詩情や浪漫を映すヨーロッパ・フリー派一流のバラード解釈、の双方にさすが鍛え抜かれ磨き抜かれた練達、加えて生鮮度抜群の輝きが示されており、その一貫してダーク・ビターでシャープ&ソリッドな音像とも相まってのっぴきならない切迫した音景色が立ち現れていて圧巻。かたやナルヴェセン(ds)の、殺気をもって荒々しく攻め立て、シュリッペンバッハの一音一音に執拗に喰らいついてゆく風な何げに獰猛さある大暴れぶりも凄味十二分で好インパクト。
01. Fuga Continuum 6:08
02. Intralude 3:35
03. Syncopsis 4:06
04. Sweeping Statements 4:45
05. Tranquil Modality 8:50
06. Furiosa 4:39
07. Arcani Numeri 2:28
08. Obscura Sententia 2:44
09. Torso 5:20
10. Wayang 7:38
11. Fuga Futura 6:03
Alexander von Schlippenbach (grand piano)
Dag Magnus Narvesen (drums)
2021年1月19日ドイツ-ベルリンのBerlinaudio録音
レーベル:
Fundacja Słuchaj!
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輸入盤・見開き紙ジャケット仕様CD