★当初はSplasc(h)から、その後はDodiciluneやTRJそしてAbeat、澤野からアルバムを連発して幅広く確かな支持を集めてきた、浪漫詩人肌の人気イタリアン・ピアニスト:ロベルト・オルサー(オルツァー?)(1971年イタリアのドモドッソラ生まれ)の、今回もまた鉄壁不動のレギュラー・トリオ(w./ユーリ・ゴルベフ-b&マウロ・ベッジオ-ds)を率いての一編。録音エンジニアはステーファノ・アメーリオ。
★折り目正しくもゴツッと固い骨太堅牢感と深い陰影に富む、小石を転がすような重心の据わったソリッド・タッチのピアノが、デリケートなニュアンスと歯切れよく進むノリや勢いを兼備した、トータル的にはあくまでテンダー&センシティヴそしてポエティック&ファンタジックな哀愁と余情溢れる"美旋律の泉"然としたリリカル・プレイを流麗かつリズミカルに綴って、涼風がそよ吹き過ぎ去ってゆくかのような瑞々しくもどこか儚げな憂さを孕んだ魅力を放ち、このピアノに生き物の如く柔軟に絡みつくベース&ドラムの、安定律動力と機略縦横の遊撃性に長けた中々フレキシブルなサポートもグルーヴと緊迫感充分にツボにハマッた、全体を通じ今日のヨーロッパ詩情派の正統らしいメロウでちょっぴりアンニュイしかも快調にノる軽やか奏演が続いて、その半ば幻想的な世界に心地よく浸れるさりげなく密度の高い快演内容。
★メロディーや和声の端麗美と詩的メランコリーを何より大切にし、リズム・スタイルは当世らしくコンテンポラリーめでヴァラエティーに富んだ、繊細で端正なしっとり感漂う抒情指向のクール・メロディック妙演が機微と軽みをもってストーリーを描くように推し進められてゆき、1曲1曲はそう長すぎぬ尺にスッキリとまとめられた快テンポの道程の中で、雄弁にウネり唄いドライヴするゴルベフ(b)やキレ味シャープに躙り寄るベッジオ(ds)、に上手く触発される恰好で、オルサー(p)の、一音一音に潤沢なる情感〜魂がこもっていながら、何げに卓越した構成センスでわりかし簡潔な流れに仕上げて見せるストーリーテラー肌のアドリブ妙技が、清新にして幽玄深い、さすが熟達した冴えを見せて絶品だ。
→基本はユーロ系の耽美派ならではの、クラシック・ピアノに由来したエレガンスと一種の吟遊詩人っぽい文学性に裏打ちされた作法に則っての精確巧緻かつマイルド&ロマネスクなその物語り様に、深遠典雅この上なき気品と節度ある優しくも物悲しい本領が発揮されており、この時点ではバップ・ピアノやブルース・ミュージックから最も遠いところにある音キャラのようにも思えるが、しかしそうした中でもまろやかな牧歌的アプローチにあっては吟醸的ブルース・フィーリングが巧みに応用されていたり、4ビートでストレートにスイングする局面(#05とか)ではオーソドックスなバップ・イディオム風のダイナミズム表現やスイング感醸成が按配よく活かされていたりと、さほど目立ちはしないもののバップ&ブルースの基礎にもしっかりと根ざした表情豊かな語り口は結構懐広げで鮮麗秀抜。
01. After You Went Away
02. Saharan Dream
03. Aurora
04. A Minuet Mint
05. Torre Del Lago
06. Parisian Episode IX
07. Piano Concerto
08. Heimweh
09. Yumeji's Theme
10. Blue Eyes Blue
11. Corale
12. A Little Waltz
Roberto Olzer (piano)
Yuri Goloubev (bass)
Mauro Beggio (drums)
*engineer:Stefano Amerio
2024年作品
レーベル:
澤野工房
在庫有り
国内盤デジパック仕様CD
※このCDのみご購入ご希望の場合は、送料込み価格2,640円になります。