★甘さ控えめのピリッと張り詰めた妥協なく凄味ある芸風・作風に定評を得てきた(但し本盤ではちょっと様子が違う)イスラエル出身の人気辣腕トランぺッター:アヴィシャイ・コーエン(1978年イスラエルのテルアヴィヴ生まれ)の、2年ぶりとなるこのニュー・アルバムは、自作の壮大な組曲をメインとしたワンホーン・カルテット基本での一編。
★しなやかな張りや鋭いキレとまろやかな温もり感やソフトネスが渾然一体となった陰影豊かでニュアンスに富む精悍トーンのトランペットもしくはフリューゲルが、雄々しく力強く苦味濃い、詩情溢れるダークなメディテイティヴ&スピリチュアル・プレイを中々綿密に綴って、奥行きも満点なちょっと深山幽谷の趣を湛えた遥か遠い山鳴りの如き華を成し、時折現れる繊細真摯に祈るようなフルート吹奏も絶妙の清涼剤効果を発揮、加えて心象風景の推移変遷を一つ一つ丁寧に掬い取ってゆく風なピアノ以下リズム・セクションの、浮遊感と律動性を上手いバランスで兼ね備えたセンシティヴなバックアップもノリと深遠さを的確に高めた、ほぼ全編を通じてコーエン流のポエティックなロマンティシズムの世界に瑞々しい感動をもって浸らせてくれる高密度内容。
★甘すぎぬも憂いや哀愁を帯びたわりかし取っ付きやすいメロディーの美とゆったりたゆたうような遊泳的グルーヴ感が全体を貫く、大凡のところはこのレーベルならではの風流で典雅なバラード・コンセプトを変らず根幹とするロマネスクな行き方が続き、リズム隊の濃やかな機微に溢れたテンダネス十二分のサポートに適宜触発される恰好で、主役コーエン(tp他)の、詩心、歌性、デリカシーを重んじるストーリーテラー調のリリカル・ブロウが何とも雅趣深き妙味を揮って絶品だ。
→かつてはひたすらハードにバリバリ吹きまくっていたのが嘘のようにも思える(但し1曲目の中盤辺りではそういう残像も垣間見える)、少なくとも本盤に限って云うなら柔和でメロウなバラード・プレイヤー〜薄闇に包まれた心象ファンタジーの世界をゆらゆらと彷徨う吟遊ロマンティストになりきったその、しかし決して甘さに流されず持ち前の硬質な翳りが巧まず効いて緊張感あるシャープ&ビタースウィートな音キャラへ自ずと収束される、そうした優しいメランコリーと刃のソリッド感をごくナチュラルに共存させたバランスのとり様は卓抜。
SIDE A
1. Ashes to Gold (Part I)
2. Ashes to Gold (Part II)
3. Ashes to Gold (Part III)
4. Ashes to Gold (Part IV)
SIDE B
5. Ashes to Gold (Part V)
6. Adagio assai (from Ravel's Piano Concerto in G Major)
7. The Seventh
Avishai Cohen (trumpet) (flugelhorn on 1, 3, 6) (flute on 1, 4)
Yonathan Avishai (piano)
Barak Mori (bass)
Ziv Ravitz (drums except 4)
2023年11月フランス、ペルヌ=レ=フォンテーヌ(Pernes les Fontaines)のStudios La Buissonne録音
レーベル:
ECM
在庫有り
輸入盤LP
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