★カナダ-モントリオールを拠点に活動し、過去ケイティ・ジョージ(vo)やマチュー・スーシ(g)のアルバムにサイド参加して冴えた腕前を発揮していた、新世代の実力派ドラマー(&コンポーザー):ヤコブ・ワツクの、今作は米モダン・ベースの大御所アイラ・コールマンを招聘した2管クインテットを基本とし、自身の敬愛する(またI・コールマンのかつてのボスであった)故トニー・ウィリアムスへのオマージュをこめた妙演(レパートリーはワツクの自作とT・ウィリアムス作品が半々ずつ)が聴かれる一編。
★歯切れよく敏活に弾み鋭く空を斬る、そしてまた重厚さをもって体当たり風にアタックもかけてくるドラムの中々手数の多い躍動がガッチリと強固に基底のグルーヴとスリルを演出し、加えてゆったり悠然と大きくウネり波打つドライヴ感に満ちた肉太ベースのおぼろな轟き、も温もりを伴って頼もしく援護射撃してくる中で、フロント2管の"テイスティー・グルーヴィーの極み"たる闊達ブロウ・リレーや骨芯の据わった硬質ストーン・タッチ・ピアノのキレのあるダイナミズム攻勢、が抑揚豊かで華々しい見せ場を繋いでゆく、全体を通じ、現代2管ハード・バップの鑑とも云うべき溌溂とした進撃が続いて、胸のすく爽やかな昂揚感が齎される会心打内容。
★旋律や和声の美と安定律動的ノリのよさを何より重んじ、伝統的なブルース・フィーリングやバップ・スピリットも潤沢に備わった、またリーダーであるワツク(ds)の機略縦横・変幻自在っぽい陽動作戦が奏効してフェイント・トラップ風のサスペンスも的確に醸成される、生鮮度抜群にして軒昂な意気に溢れた、音の輪郭も絶えず明瞭で気分はスッキリさせられっぱなしの晴れやかバピッシュ奏演が愉しげに展開してゆき、曲想からある種の思索性が匂ってくるところも一部あるが、さほどシリアスにはならず大凡のところはごく親しみやすい大衆娯楽活劇指向の風通しよく青嵐吹き抜ける壮快な道程の中で、銘々の正攻法勝負に徹したソロ合戦がどこまでも清々しい盛り上がりを見せてゴキゲンだ。
★Therrien(tp,flh)の、鋭利な破裂力と自在な瞬発力でもって精悍敏速にイキイキと飛び回るド真っ当吹奏が突き抜けるクリーンヒットを連発し、Dubovik(ts)のハード・ドライヴィング&ブルージーな渦巻き咆哮の中にちょっぴりけだるい頽廃的リラクゼーションをも仄めかす滑脱節がまた粋渋この上ない懐深さ&ウォームネス(+スモーキーな薄曇りの陰影美)を発揮、そしてロバーツ(p)のモード系ハード・バップの基本スタイルを忠実に遵守しながら独特のおおらかな牧歌性や開放感〜アウトドア気分を漂わせる"力学"と"抒情"兼備のプレイも快調だったりと、個人プレーの聴きどころは目白押しだが、そうした彼らをバッキングしながらしかし巧まざる濃い存在感で彼らを喰ってしまいかねない、コールマン(b)&ワツク(ds)のハッスルぶりの醸すコク旨さももう一つの魅力のポイント。
01. Sister Cheryl
02. Take Flight
03. Like A Bird
04. Pee Wee (p-b-ds trio)
05. Ancient Eyes
06. Hop On Down
07. Arboretum
08. Warriors
09. Qwaltz
10. You Better Bet
Rachel Therrien (trumpet except 01, 04, 07) (flugelhorn on 01, 07)
Lucas Dubovik (tenor saxophone except 04)
Bryn Roberts (piano)
Ira Coleman (upright bass)
Jacob Wutzke (drums, composition)
2022年11月25日カナダ-モントリオール(Montréal)のStudio Mixart録音
2024年カナダ作品
レーベル:
Cellar Music (Cellar Live)
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