CATFISH RECORDS

★米フロリダの大学(University of Central Florida)でジャズ科プロフェッサーも務めるオールラウンドな実力者であり、ビッグ・バンド経験も豊富で、これまで自己名義やThe Jazz Professorsなどによるアルバム群に好評を得、また数年前に出たジョージ・ガゾーンとの双頭コンボ作品も大評判だった、モダン・テナーサックスの逸材：ジェフ・ルパート(1964年生まれ)の、今回は、ケニー・バロン(p)、ピーター・ワシントン(b)、ジョー・ファーンズワース(ds)という最強のリズム・セクションを伴ったワンホーン・カルテットによる自作曲メインの一編。

★微妙に掠れた吐息を思わせるまろやかでありつつ要所要所でパンチも効かせてくる大凡は流線形っぽい鳴り様を呈したテナーが、脱力した自然体調子でスムースにウェイヴを描く感じの憂愁とリラクゼーション溢れるメロディック・スインギー・プレイを、ノリよくも幾分けだるげに綴ってスモーキー・グルーヴィーな魅力を放ち、ソリッド&スクエアーな堅実にして含蓄深い真っ当弾術でこれを丹念に盛り立てるピアノのキリッとした立ち働きも懐の広そうな妙味を揮った、以下リズム・セクションのピタリとツボを心得たサポートも奏効して、歯切れよさと波乗り気分混合の心地よい和みバピッシュ世界に浸らせてくれる白眉の快演内容。

★インティメイトな和気や憩いのムードが変らず底流し、歌心とスイング感を何より大切にした、スッキリとした分かりやすく親しみやすい人情肌娯楽指向の寛ぎリリカル・バップ妙演が流麗滑脱に展開してゆき、燻し銀のバロン(p)、コクとウネりのワシントン(b)、シャープに斬り込むファーンズワース(ds)、らの芸達者な活躍も終始ゴキゲンに際立つ中で、ルパート(ts)の、リキまず巧まぬスイスイと流れに乗って筆を滑らせるアドリブ妙技が何とも粋渋に冴え渡って絶品だ。

→恐らくはスタン・ゲッツ辺りを出発点としてひたすら滑らかに波に乗って歌いに歌うマイルド・メロディック・フレージング、に変らず確たる本領を発揮し、加えてゲッツよりもややトーンを低くしベン・ウェブスター的な倦怠感をまぶし込んだ風な、煙霧の如くくすんだ味わいのデカダン節も適所適量織り交ぜて芳醇なる吟醸感も堪能させる、という、トータルなアウトラインとしては一貫してレイドバックした落ち着きある穏やかな語調を崩さないそうした吹鳴のあり様は、誠に風流で余情にも富み説得力十二分。

★簡潔質素な抑えのワザに徹しつつ何とも云えぬ幽玄を漂わすバロン(p)や、こってり濃い口で雄弁な歌いっぷりを見せるスピリチュアリティ&ドライヴ感満点のワシントン(b)、らの節度と風格ある助演も光る。

1. Petrichor (In The Cote D'Azur)
2. Comanche Crush
3. Lana Turner
4. It Gets Better
5. Pharoah's Daughter
6. Like Someone In Love (ts-b-ds trio)
7. Nowhere To Go But Up
8. Not My Blues
9. Promenade In Blue

Jeff Rupert (tenor saxophone, composition)
Kenny Barron (piano except 6)
Peter Washington (bass)
Joe Farnworth (drums)

2021年9月9日 米ニュージャージー州イングルウッド・クリフスのVan Gelder Studio録音
2024年作品

レーベル：Rupe Media

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