★秘密基地やm°fe、世田谷トリオ、石若駿との親交、大長老:中牟礼貞則とのコラボ、そして先頃このDODレーベルから出た武本和大&平倉初音との3ピアノ競演盤、などでその辣腕と研ぎ澄まされたセンスを遺憾なく発揮してきた新世代個性派オールラウンド・ピアノの逸材:高橋佑成(1994年東京都世田谷区生まれ)の、今回は、ソロ・ピアノによる完全即興演奏集(全12トラック)という中々攻めた一編。
★きめ濃やかで端正な、透明感と潤いに富む一方で深い陰影や骨太い鋭角的キレのよさも湛えた、刻々とその表情・ニュアンスを違えてゆく芯の通ったクリアー・タッチのピアノが、ある時は神妙な調子でしっとりと瞑想的バラードの世界を創出し、ある時はよりビター&シャープに半幾何学的ダイナミック・アクションを繰り出し、またある時は柔和でマイルドな牧歌的ポエティシズムを歌い上げる、といった具合で、基本としては"バラード"と"半内省"をキーワードとしたロマネスクで彫りの深い、そして時折クラシック・ピアノの練習曲のような側面を見せるところもある、甘すぎぬ心象スケッチ風のメロディック・プレイを一定の律動的ノリのよさをもって紡ぎ、エレガントで中々荘厳かつソリッドな抒情空間を生んだ、センシビリティと勢いが共存・拮抗する静かな気魄に満ちた敢闘内容。
★1曲1曲はそう長すぎぬ尺にまとめられて上手い按配でそれぞれがキッチリ完結を見る、エヴァンス以降の耽美派ピアノの今日流発展形っぽいバラード表現と、クラシック・ピアノの色合いがわりかし濃い力学的な殺陣攻勢、が大方のところ要を成した、即ちバップ・テイストは希薄な印象のオリジナリティある詩的浪漫ストーリーが丹誠こめて語られてゆき、クール・スウィート&テンダーな哀愁描写にうっとり酔わせたかと思えば苦味走ったソリッドなダイナミズム表現で生々しいスリルの渦中にも巻き込む、というメリハリ十二分の展開構成で最後まで清新に愉しませる。
★曲により場面により筆致・文体は次々と変移するが、中でも、甘さ控えめの仄暗いメディテイティヴなバラード解釈のシリアス&ノワールではあるがポール・ブレイほど辛くもないその絶妙な匙加減のあり様や、比較的そうした制御を解いてキース・ジャレットやラーシュ・ヤンソン辺りにも底通する吟遊牧歌の世界をおおらかに体現するストレートなロマンティストぶり、などにとりわけ独自の妙味がある。ピリッとスパイスの利いた険しい面持ちの硬質な立ち回りワザもまた秀逸ではあるが。
01. part I
02. part II
03. part III
04. part IV
05. part V
06. part VI
07. part VII
08. part VIII
09. part IX
10. part X
11. part XI
12. part XII
*(all tunes improvised by Yusei Takahashi)
高橋 佑成 Yusei Takahashi (solo piano)
2024年6月4日東京・岡本太郎記念館=Taro Okamoto Memorial Museum(東京都港区南青山)録音
レーベル:
Days of Delight
在庫有り
国内制作CD
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