★先輩格のコンラッド・ハーウィグと双璧を成す(否、凌駕する?)、今日のハード・バップ・トロンボーンの最高実力者の一人:スティーヴ・デイヴィス(1967年米マサチューセッツ州ウースター生まれ)は、ここ最近も益々意気盛んな快進撃を続けているが、今回はかつてのボスであったエディ・ヘンダーソン(tp)を始め強力なオールスター的顔ぶれのセクステットを率いての、NYCスモーク・ジャズ・クラブでの白熱ライヴ編。
★ピタリと息の合ったホーン・アンサンブルが勇壮に轟いた後、おぼろに霞む霧笛のようなスモーキーなトロンボーン吹鳴やキュキュッと引き締まったドライヴ感溢れるテナー咆哮、ピリッとシャープにスパイスを効かせつつ鮮やかに構成されたストーリーを語る端正なトランペット・ブロウ、ファンキーとモーダルの間を自然に往来して全体の道筋に弾みをつけてゆく抑制あるピアノ弾奏、などがそれぞれ華々しいスター性と旨味に満ちた立ち働きでフレッシュ・スリリング&テイスティー・グルーヴィーに見せ場を競い合ってゆく、全編痛快娯楽活劇路線の鑑とも云うべき温もりと気さくな人情味一杯の正々堂々ハード・バップ大会が続いて、スッキリと愉しませ、爽やかにノセる会心打内容。
★歌心とスイング感に潔く重点を絞り込み、ブルース・フィーリング&バップ・スピリットも巧まずたっぷり備わった、硬派雄渾にしてマイルド・テンダー&ハートウォーミングな"粋渋の極み"たるリリカル・ハード・バピッシュ奏演が、敏活な中にも和気あいあいの寛ぎや安らかさをもって歯切れよく展開してゆき、メンバー全員が心底このセッションを楽しんでいる風な明るくポジティヴな意気と憩いのムード満点の至って親しみやすい道程が創出されて、ノリよくも思わずホッとする何げに極上の旨口音世界に仕上がっている。
★和やかなリラクゼーションに根ざした上でのソロ・リレー合戦の盛り上がりが興趣の要を成す一種の群像劇的な進行だが、その中でもやはりリーダーであるデイヴィス(tb)の「暖炉の温もりが煙霧の如く漂ってくる」感じの、優しく陰影豊かでブルージー・ソウルも十二分なアーシー・リラックス・プレイが一つ抜きん出た、含蓄と包容力に富む超芳醇なコク旨映えを見せていて卓越しており、また、その圧倒的花形っぷりにおいてはデイヴィスを凌駕するヘンダーソン(tp)のしかしあくまで"サイドマン"としての分をわきまえた折り目正しき立ち居振る舞いや、スマートさとイモっぽさを絶妙に交錯させるムーア(ts)のナチュラル・スムース吹奏、全体の緩急を左右する役回りとして細密な器用さを要求されるロスネス(p)の見事にその任を果たしたチョチョイのチョイのドラマティック妙技、といった辺りも各々バッチリ濃厚に魅力を揮いきっていたりと、一瞬も聴き逃せない至高の名場面が連続する。
SIDE A
1. Milestones (Miles Davis) 8:10
2. To Wisdom, The Prize (Larry Willis) 6:20
3. We See (Thelonious Monk) 8:35
SIDE B
1. Up Jumped Spring (Freddie Hubbard) 11:11
2. Star Eyes (Gene de Paul & Don Raye) 10:50
Steve Davis (trombone)
Eddie Henderson (trumpet)
Ralph Moore (tenor saxophone)
Renee Rosnes (piano)
Essiet Essiet (bass)
Lewis Nash (drums)
2023年10月26日-29日米ニューヨークシティのSmoke Jazz Clubでのライヴ録音
レーベル:
Smoke Sessions
在庫切れ
可能な限りお取り寄せいたします
限定生産輸入盤LP