★依然精力的にグローバルな活躍を続けている本邦フリー即興派アルトサックス(&クラリネット)の筆頭名手=ヴェテラン:坂田明(1945年広島県呉市生まれ)と、坂田とは2010年代半ばよりコラボを重ねてきたという、英ロンドン在住の多角的前衛アーティスト〜パフォーマー=オブジェやモーターの使い手である才媛:中島吏英(1976年生まれ)、の東京でのデュオ・ライヴ編。
★神妙そうな鈴の音やちょっと怪しいパーカッシヴなノイズがサスペンスフルに響鳴して音空間に独特の幻想的トリップ効果が齎され、そうした中で徐に繰り出されるアルトサックスやクラリネットの繊細で穏やかな概ねバラードのニュアンスを有したリリカル・インプロヴィゼーションが、静かな中に激しさをも孕んだ切々たる詩的哀愁ロマン溢れるエモーショナルかつグルーヴィーな胸に迫る魅力を放ち、これを幾分妖しげに盛り立て、と同時に茶々を入れるような感じもある奇異なるオブジェの鳴動がまた、ストレンジでビザールな神秘の妙味をマイペースっぽく揮いきった、全体を通じ殆ど爆発はしないヒタヒタと摺り足で歩を進めてゆく風なメディテイティヴ&スピリチュアルな落ち着いた道行きに、瑞々しく感動させられ、そしてジワジワとスリリングに昂揚させられる白眉の濃密内容。
★異形でアブストラクトなシュールさ満点の雑音めいた攻勢を掛けてくる中島の、間合いの計り方絶妙にして悪戯に熱中するようでもある奇音の繰り出しが一瞬一瞬・その場その場で実に的確なイリュージョナル・グルーヴ効果を上げていて卓越しており、対する坂田の、あくまでスピリチュアルな抒情的バラード・インプロヴァイザーの態を崩さない、訥々と祈るが如き瞑想感漂うポエティック・プレイがしみじみとした風流な「味」を見せていてこれまた絶品→聴く者の胸を深く打ち、といった具合で、これまで聴いたことのないオブジェの鳴り様に新鮮に驚愕させつつ、坂田のリリシストとしての理想的最良の姿・究極の奥義がじっくり満喫できる、という入神の充実作に仕上がっている。見事。
1. Random 1 (35:05)
2. Random 2 (44:41)
収録時間:79分47秒
坂田 明 Akira Sakata (alto saxophone, clarinet, bell, singing bowl, vocal≒voice)
中島 吏英 Rie Nakajima (object, motor, 手製管楽器?)
2023年12月4日東京Ftarriでのライヴ録音
レーベル:
ftarri
在庫有り
国内制作・紙ジャケット仕様CD