★楽理やアレンジ意匠にも長けた作風とクールで逞しいブローイング・スタイルで鳴らし、当初は故郷シカゴを拠点に正統的ハード・バッパーとしてスタート、ドン・エリスやオリヴァー・ネルソンのビッグ・バンドにも参加しながら、やがてロサンジェルスに拠点を移し、エレクトリック・サウンドを大幅に導入したコンテンポラリー・スタイルへ推移してフュージョン畑で大活躍、自己グループやオーケストラとのコラボレーション等々、多層多角的にプロジェクトを推進して成果を上げ、その後もフュージョンとストレートアヘッドなハード・バップ・ジャズを自在に往来するスタンスで快進撃を続けてきた、白人テナーサックスの逸材:ジョン・クレマー(1946年米イリノイ州シカゴ生まれ)の、本盤は、前半ではベース&ドラムとのトリオ、後半ではドラムとのデュオによる、シリアスなメインストリーマーぶりを遺憾なく発揮した熱演が聴かれる、1979年リリースの代表作=2枚組作品(Arista Novus原盤)のCD化版。
★逞しげな締まりや隆々さと柔らかなユルみや丸っこさが渾然一体となった、重厚でドライヴ感溢れるマッチョなトーンのテナーが、哀愁歌謡的な豊潤メロディック節と烈しく暴れ叫び吠える風なアグレッシヴなダイナミック・アクションとを掛け合わせながら、雄々しく勢いよく歩を進めてゆくモーダル・ソウルフル咆哮を屈強そうに轟かせて"タフガイの憂歌"めいた中々スケールの大きな堂々たる華を成し、歌心の塊のような温かなベースや鋭く突きを入れてくるドラム、らのしっかり骨芯の据わったサポートも安定した律動感と迫真のスリルを的確に強化しきった、全編幾分泥臭く男臭い70年代硬派モード・ジャズの典型たる悔いなき敢闘が続いて、理屈抜きで壮快に昂揚させられるアツい会心打内容。
★前半のトリオ編ではロリンズやジョーヘン辺りに通じるサックス・トリオの正統らしい行き方を程好く過激に熱血化した、とも云うべき邁進が展開され、後半のドラムとのデュオではコルトレーン的スピリチュアル路線に寄った燃焼ぶりを見せるが、どんなに苛烈な局面にあっても歌謡性&ブルース感覚を決して忘れない、というクレマーのあくまで大衆娯楽指向の人情味溢れる芸風が奏効して、至って親しみやすい旨口の活劇世界が創出されており大いに愉しませる。
★クレマー(ts)の、トリオ編では、激烈に暴れるところもある反面、極めてオーソドックスなリリカル・ハード・バッパー&吟醸的ブルースマンの本性をナチュラルに顕して、歌物演奏のベーシック・スタイルを大切にした結構ハートフルな行き方にコク深い妙味があり、デュオ編ではコルトレーン・スタイルをクレマー流に消化した音数の多い全力疾走ぶりでガツンと気持ちよく圧倒してくれる(とりわけ19分余に及ぶ大熱演のdisc2-4は壮絶!)、という、その一貫してパンチの利いた潔いメインストリーマー体質のプレイは清々しさ満点だ。気合と技フル稼働で猛ハッスルするバーネット(ds)や、唄性とブルース・フィーリングの権化たるマグナッソン(b)、らの助演もピタリと絵にハマッてナイス。
CD 1:
1. ミスティ Misty
2. 身も心も Body And Soul
3. ミスターP.C. Mr. P.C.
4. ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド God Bless The Child
5. たった一度の恋 My One And Only Love
CD 2:
1. 朝日のようにさわやかに Softly As In A Morning Sunrise
2. インプレッションズ Impressions
3. フォア Four
4. ネクサス Nexus
John Klemmer (tenor saxophone)
Bob Magnusson (bass on CD 1 - 1, 2, 4, 5)
Carl Burnett (drums)
1979年作品
レーベル:
Sony Music
在庫有り
国内盤2枚組CD(極HiFiCD/音匠レーベル仕様)