CATFISH RECORDS

★米シカゴ・シーンで演唱活動を続け、ニューヨークへも頻繁に赴いて歌い、支持層を拡大してきている若手女性歌手：ジュリア・ダニエルのファースト・アルバム。バックはギターを中心とした小コンボを基本に、男女の声楽陣4人とのアカペラ曲やストリングスとベースのみの伴奏といった転回もある。

★きめ濃やかでキリッとした張りやキレと吐息っぽい自然な脱力傾向とを微細に表裏一体化させる、ちょっとハスキーに掠れるところもあるトーン高めの端麗センシティヴ・ヴォイスが、先ずは歌詞の情緒とメロディーの美を大切にして優しく語りかけてくるようなリリカル・スタイルでしっとりと和ませ、それと並行する形で器楽的と云うよりもあくまで詩の情感を表すためのヴァリエーションとしてハミングやスキャットの手法も按配よく滑り込ませる、トータルとしては一貫して抒情性重視のテンダーで涼感ある落ち着いた調子のロマンティック演唱を綴って、瑞々しく生鮮度抜群かつどこか儚げなニュアンスに富んだ華を成し、一方、コンテンポラリーとバップの間を細かに往来するギターやコク深く情魂味たっぷりにウネり唄う肉太ベースら、インスト陣の芸の細かいサポートもピタリとツボにハマッた、全般にアメリカン白人系ジャズ・ヴォーカルの伝統をしっかり汲んだ小粋な寛ぎめのポエティシズム世界に心地よく浸れる、軽みに溢れた爽快内容。

★インティメイトな和気あいあいのリラクゼーションが変らず空間を支配する、センスのいい洒落たナイト・ラウンジで一服休憩するような極楽気分の軽妙でノリよき行き方が快テンポで続き、イキで渋いAchiron(g)や芳醇な旨味を放つマドセン(ts)、らにも絶妙のタイミングでスポットが当てられて美味しいアクセント効果が齎される中、花形主役たるダニエル(vo)の、確かに花形ではあるがわりかし控えめに節度を重んじる面もある中々奥ゆかしき活躍が、メロウ&ソフトそしてフレッシュに映えを見せて魅惑的だ。

→抒情派モダン・ヴォーカルのオーソドキシーに真摯に則っての、繊細でマイルド・ドリーミーな思わずうっとりさせられるウィスパリング(&リラクシング)唱法と、リズム感も卓抜にバップらしいグルーヴを体現する、がしかし軽やかなソフトネスを決して失わない躍動型節回し、を縦横に織り交ぜながら流麗に筆を滑らせてゆく洒脱な語り口は堂に入ったもので、加えて、発声そのもの、声音そのものに澄みきったクーリッシュな冷涼さや透明感が(しなやかな伸張力を伴って)ちょっと様式美っぽく時折垣間見られる辺りには所謂クール派シンガーの趣もあったりと、そうした、さりげなく振り幅〜奥行きを顕した基本はごく誠実そうな歌声のあり様は何ともスマート&シックで説得力も満点。

1. Night And Day (4:40)
2. Embraceable You (3:38)
3. I Want To Talk About You (3:26) (vo & chorus only) (a capella)
4. If I Loved You (3:45)
5. Beautiful Moons Ago (3:56) (vo-b-strings only)
6. Wrap Your Troubles In Dreams (3:34)
7. Lawns (5:09) (+backing vocals)
8. There Will Never Be Another You (2:57)

Julia Danielle (vocal)
Joshua Achiron (guitar except 3, 5)
Clark Sommers (bass except 3)
Dana Hall (drums except 3, 5)
Chris Madsen (tenor saxophone on 1, 7)

#3：
Julia Danielle (vocal) with
Mar Vilascca (soprano voice)
Alyssa Allgood (alto voice)
Andrew Dahan (tenor voice)
Joe Labozetta (bass voice)

#5：
Julia Danielle (vocal) with
Natalie Frakes (1st violin)
MK Guthrie (2nd violin)
Michelle Manson (viola)
Ari Scott (cello)
Clark Sommers (bass)

2023年10月2日米イリノイ州シカゴのSoundmine Studios録音

レーベル：Shifting Paradigm Records

在庫有り
輸入盤・紙ジャケット仕様CD







★Julia Danielleは 2022 Ella Fitzgerald Jazz Vocal Competitionのウィナーです。
↓2022 Ella Fitzgerald Jazz Vocal Competitionのチャンネルで紹介されています。