CATFISH RECORDS

★ヘンリック・グンデ(p)(1969年デンマークのテアボー生まれ)＆イェスパー・ボディルセン(b)(1970年デンマーク-シェラン島のハスレヴ生まれ)＆モーテン・ルンド(ds)(1972年デンマーク-ユラン半島のヴィボー生まれ)というデンマークのオールスター・トリオによる、これまで配信オンリーのリリースだった、バラードや歌物をメイン・レパートリーにごく平易で優しい妙演が聴かれる人気シリーズ:"Moods"2連作が世界初CD化→これはその第2集。2023年Mingus Records作品。

★折り目正しくも歯切れよく透明感と陰影が絶妙に掛け合わされた微細なニュアンスを感じさせる鮮度抜群の明晰スクエアー・タッチのピアノが、スタンダード歌曲の本来有するリリカルな詩的側面を北欧浪漫派流のグルーミー&メディテイティヴなフォーキー・スピリチュアル方向へ引き寄せたり、或いはドス黒くニガみあるブルース・テイストの濃い燻し銀的なシブめのハード・バップ解釈へ持って行ったり、更には汎ヨーロッパ耽美指向っぽく音数を絞った軽やかで優雅なメランコリック・ファンタジー世界へ昇華させたりと、至って分かりやすくも振り幅の大きな翻案＝抒情性重視のメロディック・プレイを丹念に、そして端麗に綴って瑞々しいエモーションを味わわせ、ベース&ドラムの生き物の如く濃やかに絡みつくスペイシーなサポートもグルーヴとスリルをアザやかに強化しきった、前作とは一味違う心象風景っぽい音空間に心地よくハマらせてくれる更に練磨された充実内容。

★メロディーや和声の美と軽妙で小気味のいいノリを何より重んじる、ユーロ系リリシズムの極致とも云うべき清新で親しみやすい爽やかなポエティック奏演が、北欧独特のフォーク的ブルース色を伴いつつ滑脱に展開してゆき、ヨーロッパならではの憂愁の細かい襞(ひだ)を一つ一つ丹念に掬い取ってゆくようなアンニュイ路線あり、ダイナミックな直進スイング感を徹底強化したド真っ当ハード・バピッシュ趣向あり、優しくもおおらかに大地を踏み締めるような牧歌的アプローチもあり、の中々ヴァラエティーに富んだ決して一本調子に陥らぬ半ドラマティックな行き方の中で、先ず前作とは違ってボディルセン(b)&ルンド(ds)の慎重にトグロを巻くが如き浮遊感の醸成に新味があり、そうした音場に繰り出されるグンデ(p)の表情豊かな哀歌的即興フレージングもしっとりクールかつ幾分妖艶に映える、といった辺りにズバ抜けてフレッシュな魅力がある。

→例によって、ヨーロピアンな唯美性溢れるロマネスク文体と、粋で渋い硬派ハード・バッパー体質のソリッド&スクエアーなダーク・ブルージー節、の双方に遺憾なく磨き抜かれた本領が確固と発揮されているが、とりわけ本作では、ピエラヌンツィ辺りの暗く憂きロマンティシズム表現の翳りを薄くしてソフト・マイルド化した風な、北欧と云うよりもっと広くヨーロッパらしい取っ付きやすさあるバラード解釈、程好く文芸色漂う筆致に傑出した妙味〜蠱惑性が認められ、清々しい好インパクトを残す。

1. Introduction (p & b only)
2. Ol' Man River
3. Fever
4. The Windmills Of Your Mind
5. Tennessee Waltz
6. From E's Point Of View
7. Golden Earrings
8. Olivia

Henrik Gunde (piano)
Jesper Bodilsen (bass)
Morten Lund (drums except 1)

2023年Mingus Records作品

レーベル：寺島レコード

在庫有り
国内制作セミダブル紙ジャケット仕様CD