CATFISH RECORDS

★個性派にして進歩派・新感覚派なコンテンポラリー・ジャズ・ギターの手練の使い手＝人気スター：カート・ローゼンウィンケル(1970年米ペンシルヴェニア州フィラデルフィア生まれ)の、本盤は、1990年代当時に率いていたレギュラー・コンボ即ちマーク・ターナー(ts)&ベン・ストリート(b)&ジェフ・バラード(ds)とのカルテット:The Next Step Bandによる、1996年ニューヨークのSmallsクラブでの未発表ライヴ音源(ブラッド・メルドー-pも1曲参加)を初ディスク化した発掘アルバム。日本盤のみボーナス・トラック1曲追加。

★妖しい翳りと豊かな潤いを湛えながらエッジの効いた尖り感も自ずと有した中々ニュアンスに富む音色のギターが、メロウ・テンダーに奥深いメランコリーやリラクゼーションを映す反面、よりシャープに苦味走った筆致をもってダイナミック・スウィンギンな硬質グルーヴをも体現する、剛柔の加減も絶妙な独自のリリカル・アクション・プレイを敏感そうに繰り出して幽玄ある魅力を放ち、一方、たゆたうが如き無重力的浮遊性とハードで重厚なドライヴ感を同時に表すテナーの滑脱ブロウもテイスティーかつクールに彩りを添えた、全体を通じ主役ギターのコンテンポラリー感覚溢れる程好くスパイシーな立ち働きに殊の外新鮮に驚かされ、感動させられる何げに高密度な敢闘内容。

★ちょっとミステリアスでグルーミーな詩的情緒性と現代流(=90年代流)のスイング感に貫かれた、ユニークだが決して難解ではないわりかしスッキリした躍動型抒情派の一典型たるメロディック・グルーヴィー奏演、がイキイキと展開してゆき、ストリート(b)&バラード(ds)の安定律動力と機略縦横の遊撃性を併せ持ったサスペンスフルなサポートに上手く触発されながら、ローゼンウィンケル(g)やターナー(ts)の腰を据えて伸び伸びと個性を揮いきったソロ活躍が、迫真のスリルと旨味たっぷりの盛り上がりを呈して壮快だ。

★ローゼンウィンケル(g)の、仄暗い幻想性を孕んだ唯一無二の物憂いアンニュイ・ロマンティシズム表現や、バップとは一線を画しながらしかしそのスウィンギンなノリや勢いという点でバップ・ギターに通じるところもあるハードボイルド・アクションなど、恐らくはジョンスコやメセニー、アバークロンビーらの成果を踏まえた上で最早その出所を一々意識させないワン&オンリーのローゼンウィンケル流を確立させ、ローゼンウィンケル色に染め上げて見せた、グルーヴィーにして神秘性漂う弾鳴のあり様は実に蠱惑的なほどに卓越しており、

かたやターナー(ts)の、例によってショーターやマーシュを十全に研究した跡を窺わせるクール・スムースな遊泳的吹法が好調な他、本作に限って云えば結構コルトレーン・スタイルを踏襲したアグレッシヴ咆哮も清新に炸裂していたりと、その表情豊かな気合みなぎる立ち回りもナイス対抗馬ぶり。加えて、#3に客演するメルドー(p)の、徹底して甘さを排し鋭角的パーカッシヴ攻勢を貫くピリッとした精悍勇躍も好アクセント。

1. A Shifting Design
2. Use Of Light
3. Zhivago
4. Alpha Mega
5. A Life Unfolds
6. The Next Step
7. Minor Blues (ボーナストラック)

Kurt Rosenwinkel (guitar ; possibly except 6) (possibly vocal on 5) (possibly piano on 6)
Mark Turner (tenor saxophone)
Ben Street (bass)
Jeff Ballard (drums)
Brad Mehldau (piano on 3)

1996年米ニューヨーク市グリニッチ・ヴィレッジのSmalls Jazz Clubでのライヴ録音

レーベル：Mocloud (Heartcore Records原盤)

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国内盤CD