★ディレク・ベイリーやエヴァン・パーカーらと共闘を重ねた泣く子も黙る英国フリー・インプロ派ドラム&パーカッションの大御所:トニー・オクスリー(1938年イングランドのシェフィールド生まれ、2023年死去)の、これは、マンフレート・ショーフ(tp,flh)やシローネ(b)ら国際的顔ぶれの強力オールスター・クインテットを率いて、1992年10月2日、ドイツのボーフムで開催されたルール・ジャズ・フェスティヴァルに出演した折のステージの模様を捉えた未発表・初出ライヴ・アルバム。
★硬質パーカッシヴ・タッチで不協和音の嵐を不屈に逆巻かせるピアノの猛爆攻勢で先ずは度胆を抜き、そこへ激烈に暴れまくるワイルド&ヴァイオレントなキレ味鋭いドラムの速射打撃や重低音を揺さぶる分厚いベースのおぼろ鳴動が加わって強襲力を極め、更にスピリチュアルとアブストラクトの間を自在に往来するサックス(ソプラノ)の烈火の如きフリーキー咆哮や、容赦なく空を引き裂くエレクトロニクスのアナーキー轟鳴、ちょっとスモーキー・グルーミーに唸り歌うトランペットの哀愁と破壊力がない交ぜになった敏捷ブロウ、もなだれ込んで来て、全体を仕切るドラムの多彩で超敏感なゲリラ・アタック!とも相まって、殊の外ハードコアな大乱闘世界が創出された、シリアスではあるが結構スカッと壮快な昂揚感も得られる充実の敢闘内容。
★トータルなアウトラインとしてはヨーロッパ系のインプロヴァイズド・ミュージックの一典型っぽいイメージがあり、オクスリー(ds,per)の地下実験的であり同時にパワー・ミュージックの趣も備えた不敵な煽り立て猛攻がそうした欧州フリー・カラーを象徴しているとも云えるが、その反面、ショーフ(tp,flh)やスタビンズ(ss,ts)のプレイにはスピリチュアリティやメロディアス傾向が時折顕著になるところもあって、硬派王道な「フリー・ジャズ」らしさが一気に高まったりと、中々先読みを許さない難解にしてフレッシュ・スリリングこの上ないバランス絶妙の道程が立ち現れていて、大いに愉しませる。
★弓弾きも効果的に活用しつつ怪しく不気味に迫るシローネ(b)や、ピアノとエレクトロニクスともに一切手加減なしに暴れ倒すトーマス、シャカシャカ・ドコドコと忙しなく縦横無尽かつスピーディーに全力で走り回るオクスリー(ds,per)、トランペット本来の音色の美しさを決して犠牲にせずビター&ダークなゆとりを残した躙り寄りを見せるショーフ(tp,flh)、シュールで異形なアブノーマル・スタイルと旨味溢れるスピリチュアル手法を的確に、ドラマティックに使い分けるスタビンズ(ts,ss)、といった具合で一瞬たりとも聴き逃せない極めて密度の濃い即興ソロの名場面が連続する。
1. Angular Apron
Manfred Schoof (trumpet, flugelhorn)
Larry Stabbins (soprano saxophone, tenor saxophone)
Pat Thomas (piano, electronics)
Sirone (bass)
Tony Oxley (drums, percussion, electronics)
1992年10月2日ドイツ-ボーフム(Bochum)で催されたルール・ジャズ・フェスティヴァル(Ruhr Jazz Festival)に於けるライヴ録音
レーベル:
Corbett VS. Dempsey
在庫有り
見開き紙ジャケット仕様CD