★ノルウェー-オスロを主たる拠点として汎ヨーロッパ的活躍を続け、Nagel-HeyerやResonant Music等よりの諸作に好評を集めてきた英国出身の個性派ピアニスト:ロイ・パウエル(1965年英国、ラットランドのランガム=Langham,Rutland生まれ)の、本盤は、2009年にリリースされた「Napoli」の続編にあたる、エレキベース&ドラムとのトリオによるイタリア楽曲集。
★団子状に太く丸っこく重みをもってリズミカルに鳴るエレキベースが小回りの利いたグルーヴ効果を齎し、シャープ&センシティヴでいて豪胆に速射パンチ・キック的アタックをも掛けてくるドラムの歯切れよい躍動もスイング感を強化する中で、折り目正しく滑らかな風合いと鋭角的キレや硬質さを併せ持った小石を転がすような、なおかつ透明感も自ずと備わったソリッド&クリアー・タッチのピアノが、哀愁の歌謡性に溢れながらしかし甘すぎずハードな力学手法も豊富に盛り込んで音場を適宜緊迫させ、トータルとしては今日流欧州型リリカル・アクション・ピアノの正統らしいイメージの詩的敏活プレイを綴って、ロマネスクでいてキリッとした精悍さの絶えぬ凛々しい魅力を放った、全般にイタリア歌曲の本来有する浪漫傾向やメランコリーとリアル・ジャズならではのシリアスなスリル或いはハードボイルド感が上手く細密に融け合った、歯応え充分の敢闘内容。
★親しみやすいメロディーの美とダイナミックなノリのよさに何より重きが置かれつつ、ハード・バップ・ジャズ特有の強硬なる気魄そしてタフネスや生々しいサスペンスも決して失われることのない、アクティヴ抒情派の一典型たる、エレガントで爽やかな中にも苦味や翳りを秘めた雄渾の熱演が意気軒昂に展開され、流麗に躍るフェリチアティ(elb)や鋭利に斬り込んでくるデ・セータ(ds)の奮戦もスリリングかつテイスティー・グルーヴィーにそこかしこで旨味+存在感を際立たせ、彼らに按配よく触発される恰好で、パウエル(p)の、しっかりと重心の安定したスタンスから繰り出されるアドリブ妙技が、巧まず研ぎ澄まされた毅然げでいて余情豊かな冴えを、キレを見せて卓抜だ。
→エヴァンスやピエラヌンツィ辺りとはまた趣を違える、敢えて大雑把に捉えるならハンコック的ダイナミズム指向をユーロ化して独特の憂愁とニガみ走ったガッツを加えた、とでも云えそうな、陰影豊かで彫りの深いビタースウィートなアンニュイ・ロマンの歌いっぷりに無双の妙味があり、更に加えて、その殊の外精確で堅固な1ミリもブレず力強い筆運びには、クラシック・ピアノの修練を十全に積んだ背景がありそうな印象もあってそこら辺がわりかし荘厳で凛とした程好くシビアな鳴音キャラに繋がっている、という、全体を通じ大衆娯楽の象徴のようなイタリア産ソングをあくまで入魂の真剣勝負で料理するそうした絶妙なバランスのとり様が何より本領、何より魅惑力の要。
1. Malafemmina (Totò a.k.a. Antonio de Curtis)
2. Roma nun fa la stupida stasera (Armando Trovajoli)
3. Marechiare (Francesco Paolo Tosti)
4. Ciumachella de Trastevere (Armando Trovajoli)
5. Mathea (Roy Powell)
6. Arrivederci Roma (Renato Rascel)
7. Munasterio 'e Santa Chiara (Alberto Barberis)
8. Emily's Wonder (Roy Powell)
9. Chitarra Romana (Eldo Di Lazzaro)
Roy Powell (piano)
Lorenzo Feliciati (electric bass)
Lucrezio De Seta (drums)
2023年10月 Hemiola Studio,ROMA ITALY 録音
レーベル:
寺島レコード
在庫有り
マスタリング:ステファノ・アメリオ
国内制作セミダブル紙ジャケット仕様CD