★1962年に自己のコンボを結成し、オーネットやコルトレーン、マイルス、ジョージ・ラッセルらに影響を受けた硬質なジャズを探究、やがて偉大な才人クシシュトフ・コメダのグループに加わって一躍頭角を現し、コメダの死後も国際的な活躍を続けてポーランドの硬派ジャズ・シーンをリードし続けた独創肌トランぺッター:トマシュ・スタンコ(1942年ポーランドのジェシュフ生まれ、2018年ワルシャワで死去)の、本盤は、シンプル・アコースティック・トリオで鳴らした個性派ピアニスト:マルチン・ヴォシレフスキ以下のトリオと組んだ(スタンコとヴォシレフスキ・トリオのコラボは1994年に本格スタートし、ECMからはこのメンバーで2002年に第一弾アルバムを発表;-録音は2001年-、その後も同じ顔ぶれであと2作品をリリースしている)鉄壁カルテットによる、2004年独ミュンヘンでの未発表ライヴ音源を収めた発掘アルバム。
★スモーキーな翳りやおぼろ感とシャープなキレや破裂性を併せ持った決してリキまぬ自然体トーンのトランペットが、風に乗って悠々と宙を舞うかのような、脱力調子の中に深い哀愁や美メロを満載したリリカル・プレイを節度をもって簡潔に紡いで、誠に典雅で余情豊かな妙味をちょっと控えめに放ち、鋭角性や硬質感に富んだソリッド・タッチ・ピアノのしかし結構滑らかに抑揚を描くモーダル・ロマネスク弾奏もクール&フレッシュに彩りを添え、またドラム&ベースの芸の細かい半ゲリラティックな躙り寄り(或いはトグロ巻き?)サポートもグルーヴとスリルを的確に高めた、全体を通じ主役トランペットの丹念に真心がこもっていながらどこか達観した風でもある"殊更に頑張らない"吹鳴が聴く者を優しく包み込んで、爽やかな感動が齎される充実内容。
★ヨーロッパの耽美抒情派の一典型らしい、旋律や和声の端麗さを保ちながら深遠なる詩的音景色をあくまで静謐に描き出してゆく、といったイメージの、小気味よく軽妙なスイング感を伴った独特のロンリネス漂うアクティヴ・ポエティック奏演、が穏やかに、落ち着きを絶やさず展開してゆき、リズム・セクションの流麗でエレガントそれでいて機略縦横の自在さ・鋭敏さもおのずと備える何げに瞬発力抜群のバックアップ、に適宜触発されつつ、スタンコ(tp)の、彼らサイド陣に刺激は多々受けるも一貫してマイペースを崩さない懐の広そうなアドリブ至芸が、実にアザやかにピタリと絵にハマッていて見事。
→寛ぎめリリカル路線の曲調が大方のメインとなっていてスタンコ(tp)の力の抜けたメロウ・テンダー&センシティヴな憂いを含んだマイナー・メロディストぶりが遺憾なく発揮されており、テンポのあるアクション的局面にあってはマイルスのフリー・ブローイング・スタイルにも通じる程好く鋭利な立ち回りワザにも転じるが、しかしいかなる展開においてもワンポイントの余裕や品格を失うことなく、構成センスもしっかりした一音たりとも無駄のないストーリーラインをチョチョイのチョイと事も無げに、洒脱に編み上げて涼しい顔といった風情の語り口の粋、一種の諦念めいた"軽み"を感じさせる吹鳴のあり様は全く鮮麗この上なしでさすが卓越している。ハンコックの東欧化っぽいヴォシレフスキ(p)の端正な立ち居振る舞いも殊の外美しい。
1. Hermento's Mood
2. Song For Sarah
3. Euforia
4. Elegant Piece
5. Kaetano
6. Celina
7. Theatrical
Tomasz Stańko (trumpet)
Marcin Wasilewski (piano)
Sławomir Kurkiewicz (bass)
Michał Miśkiewicz (drums)
2004年ドイツのミュンヘンでのライヴ録音
レーベル:
ECM
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