CATFISH RECORDS

★ボストンを拠点に活動し、トニー・ベネットの音楽監督を担うなど歌伴の名手として、また教育者(バークリー音大でプロフェッサーを務める)としても名を馳せる、アメリカのヴェテラン・ピアニスト：ティム・レイの、ベース＆ドラムとのピアノ・トリオによる一作。

★歯切れのいい鋭角性や骨芯のしっかり据わった硬質感の際立つ結構分厚いハード・タッチを活かしての力学的アクション攻勢で圧倒する一方、線を細め軽みを効かせた、或いはコードワークを用いてのクール・ファンキーな粋渋小唄っぽいフレージングで和ませたりと、主役ピアノの局面に応じて剛柔を上手く使い分けるメリハリ充分の躍動型ブルージー・メロディック・プレイがスカッと壮快かつ旨口に爽やかな魅力を放ち、重みをもって太くウネり波打つワイドなベースや敏捷でシャープな速射砲撃を精確に嚙ますドラム、らのサポートもノリとスリルを的確に醸成しきった、全般にハード・バップ系ピアノ・トリオの正統らしいウマみとグルーヴ満点の極めてエンターテイニングな快進撃が続いて、気持ちよくノセられる安心の好演内容。

★バップ・ジャズならではのダイナミックな立ち回りの迫力と明快で洒脱な歌心を併せ持ち、小気味よく安定律動するスイング感も十二分な、ごく親しみやすい明朗娯楽指向のアクティヴ・リリカル奏演が溌溂と愉しげに展開され、ロックウッド(b)やウォーカー(ds)の芸達者で機略縦横の遊撃力を持った凹凸感あるバックアップに巧く刺激されながら、レイ(p)の、基本は至って正攻法でありながら独自の甘美なメロディーラインの歌い様にも瑞々しい妙味を発揮した、敏活滑脱なアドリブ技が抜群の鮮度で冴え渡っており何とも清やかだ。

→真っ当なジャズ・ピアニストらしい側面に関して云えば、伝統的バップ・イディオムを活用した殺陣風のダイナミズム表現や幾分モーダル寄りの微熱を孕んだパッショネートな疾駆驀進調、といった抑揚烈しめのソリッド&スクエアーな躍動手法と、ちょっと玉転がしっぽい軽涼なブロック・コード弾きを用いた小粋な寛ぎファンキー節、の掛け合わせを旨とする、即ち「バップ＋ファンキー」・タイプの王道を行く芸風が大筋だが、バラードや抒情性の濃いロマンティックめの局面においては、ゴスペルとかスピリチュアル系のポップスもしくはフォーク・インスト(或いはブルース・インスト?)調のスウィート・テンダーな端麗フレーズが実に清新に飛び出し、そういうコンテンポラリー・ポップ感覚を反映したメロウな美メロ・センスの発露にこそ、鉄板のファンキー・バップ趣向と並立する形でワン&オンリーの本領〜オリジナリティが堂々揮われている感があり、何ともフレッシュこの上なし。ストリングスにも似てドリーム・ムーディーだったりファンク型だったりのキーボード活用も巧い転回アクセント。

01. Bye-Ya
02. Stolen Moments
03. NO Worries
04. The Meeting: The Jbug and the Kman
05. Mojave
06. Theodore the Thumper
07. Fire and Rain
08. Lawns
09. Moon in the Sea
10. Improv #1 (for Chick)
11. Nighttime
12. The Windup
13. Fire and Rain (radio edit)

Tim Ray (piano) (keyboard on 03, 07, 11, 13) (melodica? or accordion? on 04)
John Lockwood (bass except 03) (electric bass on 03)
Mark Walker (drums) (percussion on 03, 04, 07, 12, 13)

2023年作品

レーベル：Whaling City Sound

在庫有り
デジパック仕様CD