★奇才:サン・ラ(p,synth)(1914年米アラバマ州バーミングハム生まれ、1993年死去)率いるアーケストラの、1988年夏の来日時、8月8日新宿ピットインで行なったライヴの模様は、過去8曲をセレクト収録したアルバムがDIWからリリースされていた(LP:DIW-8024/CD:DIW-824)が、今回それと同内容のアナログLP復刻版がジャケット・デザインを改変して新たに登場。
★2ドラムによる強硬に捲し立ててくるような轟鳴に上手く触発されながら、フリーキー・トーンで狂おしくも屈強に泣き叫び咆哮するサックスや、潰し気味の音色でパワフルに唸るトランペット&トロンボーン、猥雑にわめき散らすが如きホーン・アンサンブル、結構ストレート・グルーヴィーなブルージー・バップ的行き方と怪しいノイジー攻勢を交錯させるギター、らがイキイキ溌溂として豪快軒昂に見せ場を繋いでゆき(序盤ではリーダーのサン・ラ本人はあまり表には出て来ず粛々とバッキングに勤しんでいる)(→だがしかし徐々に出番が増えてやがて大活躍に転じる!)、胸のすく清々しい興奮と感動が齎される、何げにしっかり高密度でもある会心打内容。
★ここぞの場面ではボスであるサン・ラのブルース・フィーリング溢れるノリにノッたピアノ・プレイもばっちりフィーチュアされつつ、トータルなアウトラインとしてはある種の"奇形の祝祭性"を帯びたサーカスを見るような、開放感にも富むおおらかなダイナミック・スウィンギン熱演が壮大なるスケールとドラマツルギーをもって雄渾に展開され、サン・ラ自身の演奏もバップ&ブルースとフリー・ジャズを自在に往来するものだがバンド全体もそれと同様に、モダン・ジャズ・ビッグ・バンドの正統らしい側面とより渾沌としたフリー面を併せ持った(但しどちらかと云うとフリー色は控えめで、全体のテイストは幾分変り種ではあるもののわりかしオーソドックスなモダン・ビッグ・バンドとして聴けるというのが大凡のところだ。)(→エリントン楽団をサン・ラ流に変形させたような趣があったりも...)、一貫して風抜けよく賑々しさ満点の晴れやかな行軍を見せており、適度に異形さもあるもののあくまで取っ付きやすいエンタテインメント性を重視した陽気な敢闘が続いて、大いに沸かせる。
★サン・ラの、ウォーラー、テイタム、モンクらの影もチラつくジャズの本道然としたピアノ・ソロや、一転してよりブッ飛んだ宇宙飛行の趣あるシンセ技など、その気力も充実しきった猛ハッスルの様が中々テイスティーに映えている他、サックス陣のバップ&モードの語法にキッチリ則ったアーシー・ソウルもみなぎる骨太滑脱ブローイング(或いは怪異に呻き吠えるアブストラクト吹奏)(→とりわけジョン・ギルモアの晴々朗々とおおらかに歌って見せたりフリーキーに音をヒネくり捩らせて見せたりの気合軒昂なるグルーヴィー・プレイ=独壇場的モーレツ勇躍が素晴らしい!)や、スピリチュアリティ溢れる気さくそうなヴォーカル・アンサンブル、タイロン・ヒル(tb)のスモーキー&ダウン・トゥ・アースな吟醸ワザ、トランペット勢のピリッとして聴いているこちらの背筋にも鋼を入れてくれるような精悍凛々プレイ、そしてまた、ブルース・エドワーズ(g)のエキサイトしてくると生粋バッパー&ブルースマンの本性を露わにする洒脱でアジな渋い至芸、更にはローロ・ラッドフォード(elb)の弾力団子っぽいトーンでテイスティー・グルーヴの極みを見せる敏活躍動ぶり、といった辺りも各々奮いに奮っていたりと、ソロ・コーナーは超美味しい聴きどころの連続。
Side A:
1. Introduction 〜 Cosmo Approach Prelude
2. Angel Race 〜 I'll Wait For You
3. Can You Take It?
4. If You Came From Nowhere Here
Side B:
1. Astro Black
2. Prelude To A Kiss
3. Why Was I Born?
4. Interstellar Lo-Ways
Sun Ra Arkestra:
Sun Ra (piano, synthesizer, vocal)
Michael Ray (trumpet, vocal)
Ahmed Abdullah (trumpet)
Tyrone Hill (trombone)
Marshall Allen (alto saxophone, flute, percussion)
John Gilmore (tenor saxophone, clarinet, timbale, vocal)
Danny Ray Thompson (baritone saxophone, percussion)
Eloe Omoe [Leroy Taylor] (alto saxophone, bass clarinet, contra-alto clarinet, percussion)
June Tyson (violin, vocal)
Bruce Edwards (electric guitar)
Rollo Radford (electric bass)
Samarai Celestial [Eric Walker] (drums)
Earl "Buster" Smith (drums)
1988年8月8日新宿ピットインでのライヴ録音
レーベル:
Super Fuji Discs
在庫有り
国内制作・限定生産LP