★1970年代後期よりプロ活動を行い、澤野の諸作でブイブイ言わせてきたオランダの人気ヴェテラン・ピアニスト:ヨス・ヴァン・ビースト(1956年生まれ)の、今回はギター&ベースとの所謂"旧式ピアノ・トリオ"による一編。
★きめ細かで流れるような滑らかさと鮮明なキレを併せ持った、アウトラインとしては端正めのクリアー・タッチ・ピアノが、吟醸的アーシー・ソウルとアメリカン歌物由来の洒脱さに溢れた寛ぎバップ・プレイをひたすら軽妙に紡いで、風流でいて含蓄豊かな熟達の魅力を揮い、精確なリズム・カッティングと少々荒削りでダウン・トゥ・アースなこってり節を上手く使い分けるギターや、柔和な温もりと力強く歯切れよいドライヴ感を兼ね備えたベース、らの活躍も各々ピタリと鮮やかにツボにハマッた、全編明快で優しい人情娯楽肌メロディック演奏の連続においしく小気味よく酔わせてくれる、センスよき好投内容。
★ドラムレス編成ならではの丸みある軽やかなサウンドの感触も心地よく、インティメイトな和み気分と流麗なスインギー・グルーヴに貫かれた、歌心徹底重視の気さくそうなリリカル奏演がゆとりと機智をもって滑脱に展開してゆき、J.v.ビースト(p)の芸風ならびにレパートリーのせいもあって、ヨーロッパ色は殆ど感じさせずアメリカ・テイストに富んだごく親しみやすい"寛ぎラウンジ小唄セッション"の様相を呈していて、どこまでもシンプル・ストレートでブルースの旨味に満ちた大衆派エンタテインメントの鑑とも云うべき道程の中、J.v.ビースト(p)の、リキみを解いた自然体にして脱力感覚溢れるプレイ、そのハートフルな憩いの味わいが聴く者にもダイレクトに伝播して、思わずゆったりリラックスできる寸法となっており、全くゴキゲンだ。
★J.v.ビースト(p)の、スタイル的にはオスカー・ピーターソンを幾分かライト化・ソフト化して、(少なくとも本盤では)ストライド手法や大立ち回りのアクション傾向は控えめに抑えた感じの、穏やかな「ファンキー・バップ」弾奏が簡潔かつ幽玄深く悠然と冴え渡っていて見事で、バラード辺りではヨーロピアンらしい耽美的浪漫センスを垣間見せたりもするが基本の立ち位置はあくまで"ファンキー"から外れることがなく、欧州カラーは持ち前の折り目正しい所作・筆捌きにほぼ留めている、というバランスのとり様が何げに達人の熟練(と淡々さ?)を感じさせる。加えてKoning(g)の、クリスチャン〜ケッセル系バップ・ギターの正統奏法を根幹に、ソロ・パートでエキサイトしてくるとベンソン〜グリーン系とまでは行かないまでもブルース色(〜ソウル・フレイヴァー)の濃い勇み肌の攻勢にも転じる、その中々ドラマティックな奮戦も好アクセント。
01. I've Got The World On A String
02. Song To Elitha
03. I'm Confessin'
04. That's All
05. If You Only Knew
06. Broadway
07. Old Folks
08. But Not For Me
09. Body And Soul
10. Blues In The Closet
11. Love Ballade / Hymn To Freedom (solo piano)
12. Yours Is My Heart Alone
Jos van Beest (piano)
Vincent Koning (guitar except 11)
Hans Mantel (bass except 11)
2024年作品
レーベル:
澤野工房
在庫有り
デジパック仕様CD
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