★アルトサックスの加藤大智(1983年名古屋市生まれ)、ギターの成瀬明(1987年生まれ)、ベースの北川弘幸、という東海地区にゆかりのある腕利きの3人が対等の立場で結成した新生ユニット:Assorted=アソーテッドによるアルバム第1作、=スペシャル・ゲストとしてギターの大御所:中牟礼貞則が6曲に参加している。
★ハジきよくウォーム&ダイナミックに律動闊歩する肉太ベースのヘヴィー・スウィンギンな分厚い弾奏に導かれて、小粋かつブルージーに朗々とよく歌うアルトや、バップ色の強いキレのある左チャンネル・ギター(恐らく成瀬)並びによりくぐもった風合いでクール傾向に寄った右チャンネル・ギター(恐らく中牟礼)、らが色彩感豊かに中々風流な見せ場を繋いでゆき、全編そのまろやかで落ち着いたリリカル妙演の連続にホッと安心して和みきれる快適内容。
★インティメイトな和気あいあいのリラクゼーションと優しい温もり感を変らず湛えた、何より歌心とスイング感を大切にする洒脱で親しみやすい抒情派演奏が流麗に展開され、終始ガッチリと頼もしく屋台骨を支える北川(b)の重厚グルーヴィー至芸がコク深く確たる魅力を放ち続ける中で、軽みとイキなセンスに溢れた加藤(as,fl)の"歌性の極意"を悠々見せるかのようなマイルド・メロディック・プレイが爽やかに華を成し、実際その加藤が一座の花形の位置にあるのは違いなく大いに類稀な旋律才覚や清々しいスター性を発揮して座をさらうわけであるが、しかし中牟礼(g)がゲスト参加していることで2ギターのソロ・バトルの方へ自然と耳が行ってしまう、といった具合で、明朗で晴れやかな加藤(as,fl)の唄いっぷりと、成瀬(g)&中牟礼(g)のちょっと渋めのやりとり、の二重構造・二層構造が美味しく愉しめるという寸法だ。
★成瀬(g)と中牟礼(g)のともに「抒情派」という点では似通っているところも多いものの、成瀬の方はクリスチャン〜ケッセル系バップ・ギターの正統スタイルを根幹として時折ややベンソン〜グリーン系統寄りのアーシー技(或いはまたウェス似のオクターヴ奏法とか)を垣間見せる面もあったりと、繊細でいてピーンと背筋の伸びた凛々しい鳴動を大方の身上としており、対する中牟礼の方は、スモーキーにくすんだトーンでジミー・レイニーやジム・ホール辺りに底通する仄暗く冷涼な燻し銀の趣ある筆運びにさすが醸熟の本領を示す、という、微妙だが色合いの異なる両者の競合が殊の外フレッシュ・スリリングな妙味を放っていて卓抜。
★一方彼らの静かな対決を横目にふんわりスイスイとメロウな遊泳ぶりを貫く加藤(as,fl)の、往年のウエストコースト・ジャズを思わせる軽妙瀟洒な吹鳴のあり様がまた最高にイカしている。
★全般に、かつてのポール・デスモンドとジム・ホールの共演作群を彷彿とさせる、その楽想を継承したような得難い趣がある。
1. Something Special (Jim Hall)
2. Embarcadero (Paul Desmond)
3. Wendy (Paul Desmond)
4. Here's That Rainy Day (Jimmy van Heusen)
5. Deep In A Dream (Jimmy van Heusen)
6. Alone Together (Arthur Schwartz)
7. Samba Em Preludio (Baden Powell)
8. Valse Hot (Sonny Rollins)
9. The Answer Is Yes (Jane Hall)
加藤 大智 Daichi Kato (alto saxophone except 5, 7) (flute on 5, 7)
成瀬 明 Akira Naruse (guitar)
北川 弘幸 Hiroyuki Kitagawa (bass)
special guest:
中牟礼 貞則 Sadanori Nakamure (guitar on 1, 2, 3, 4, 8, 9)
2023年4月25日,26日Groove Studio(千葉県松戸市)録音
レーベル:
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