★"硬質"を身上とするフリー派で鳴らした突出個性のピアニスト〜独創肌インプロヴァイザーであり、またオーケストラ・コンダクター&アレンジャーとしても非凡な才覚を発揮して高い評価を得てきたヴェテラン異才:藤井郷子(1958年生まれ、東京都出身)の、須川崇志(b)&竹村一哲(ds)と2019年に結成した近年の主力ユニット=藤井郷子東京トリオ、によるアルバム2作目=渋谷公園通りクラシックスでのライヴ編。
★歯切れよくも陰影濃く硬質(おっ出たな!)骨太な、岩石を転がすかの如き安定感ある強固タッチのピアノが、深い哀愁やスピリチュアリティに満ちたリリカルめのアプローチと、幾何学的アブストラクトさ溢れる"乱調"に徹したアナーキーな暴れぶり、とを細かに交錯させつつほぼ一貫して「ダイナミック・アクション」の道を突き進むパワー全開の大攻勢を見せて、こちらも思わず血沸き肉躍るド迫力の魅力(〜凄味)を放ち、一方、律動的グルーヴ演出と並行して弓弾きによる異形な蠢き・絡みもつれ込みにより比重を置く怪しいベースや、色彩感も豊かに様々な音響を駆使して奇襲をかけてくるパーカッシヴ・ドラム、らのゲリラ戦術巧みな意表を衝く遊撃も鮮度抜群に生々しいスリルを強化しきった、全編極めて即興度の高いインタープレイ・バトルの連続で息詰まるような圧倒的サスペンスと昂揚感を満喫させてくれる、ただならぬハイテンションさの維持された敢闘内容。
★情緒性のある所謂フリー・ジャズと、ヨーロッパ系とかに通じるインプロヴァイズド・ミュージック、の間を往来する感じの、妥協なき真剣勝負のぶつかり合い・ど突き合いが超スリリングかつ超パワフルに展開してゆき、情容赦なく正三角形的に交じりクラッシュする三者の、気力もイマジネーションも充実しきった白熱インプロヴィゼーションが鮮烈そして豊饒に盛り上がりを見せて卒倒モノだ。
★藤井(p)の、さぞ過激で抽象主義の極致めいたダダイスティックな爆撃をカマしてくるだろうと思ったら、他の二人と比べると意外にそんなこともなくて、ピアノの内部弦をイジるノイジーな行き方とかもあることはあるが、基本はあくまでポール・ブレイやマリリン・クリスペル辺りに底通する(似ているわけではない)辛口だが抒情性や浪漫のちゃんとあるポエティックな文脈形成、並びにセシル・テイラーや山下洋輔を想起させるところのある不協和音の洪水的な打楽器型のヴァイオレント・アタック、を概ね二本柱の根幹としていて、そういうフリー・ジャズ・ピアノの正統らしい筆運びでグループ全体に上手くバランスを齎しており(演目は全て藤井のオリジナル曲で、自由即興の破壊力は満点ながらあくまで"曲らしさ"を大切にした藤井の演奏姿勢も誠実げで好感が持て◎)旨味も十二分で、その反面、金属的に軋む風な奇音を頻発させる竹村(ds)や、不気味に這い回るイメージの須川(b)のアブノーマルなアルコ技、らの方がむしろ実験色の強い(「曲など何処吹く風」の?)カオスな掻き回し係っぽい役割を担っているのもまた興味深い魅力。
1. Along The Way 6:25
2. Gentle Slope 9:25
3. Sky Reflection 10:58
4. From Sometime 12:22
5. Take A Step 10:54
6. Jet Black 5:52
*all composed by Satoko Fujii (BMI)
藤井 郷子 (piano)
須川 崇志 (bass)
竹村 一哲 (drums)
2023年3月21日渋谷公園通りクラシックスでのライヴ録音
レーベル:
Libra
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