★本邦モダン・サクソフォンの最高峰名手の一人=ヴェテラン:山口真文(1946年佐賀県唐津市生まれ)の、前作は小牧良平(b)&本田珠也(ds)とのピアノレス・トリオだったが今回はその2人に片倉真由子(p)も加わった、今日主流派シーン最強とも云えるカルテットを率いての、自身は全曲ソプラノサックスを吹くという、しかもソプラノによる演奏を想定して書かれた自作オリジナル曲群を演目とした入魂作。
★キュッと鋭く細く絞りが利いていながら強固な硬質堅牢性にも事欠かない研ぎ澄まされた風合いを呈するトーンのソプラノが、一聴アグレッシヴ&エネルギッシュそうでいてどこか醒めた冷厳さ〜ハードボイルドさも自ずと漂う、制御力抜群の苦味走ったモーダル・プレイを、その一音一音を鮮明かつ精確に響かせつつ凛々しげに綴ってキレのあるソリッドな魅力を放ち、そうした主役ソプラノのスパイシーで毅然としたちょっとストイックともとれる躍動ぶりに比し、それとは好対照に熱血直情型っぽい表情豊かなダイナミズム攻勢を掛けてくるピアノ以下、リズム隊のピーンと張り詰めた気魄十二分のサポートもガッチリ頼もしく妙味を際立たせた、全編今日流ストレートアヘッド路線の真髄たる勇戦勇武熱演が続いて壮快に昂揚させてくれる、充実の敢闘内容。
★バラード等の適度に和らいだ局面も垣間見せるものの、基本的には真剣勝負のアクションの迫力・生々しさ〜息詰まるスリルや重みあるハードな音の質感に確たるこだわりめいた主眼の置かれた、極めて"硬派"で雄渾な甘さ控えめのダイナミック・スウィンギン演奏が精悍に展開してゆき、サイド陣の中々ハイテンションで猛々しく喰らいついてくる遊撃的バックアップに上手く刺激されながら、山口(ss)の、腰を据え肝を据えて粛々と燃えるアドリブ奮戦が荘厳とも云えるシリアスな凄味充分の冴えを、キレを見せていて何より圧巻だ。
→ほぼ一貫してピリッとしたシャープで陰影濃い勇猛な立ち回りに終始しており、その、コルトレーンともリーブマンともレイシーともショーターとも異なる(流し吹きをせず一つ一つの音に確信・精魂をこめる濃いアプローチ?)、ソプラノ特有の尖った突起感を活かしつつの敏捷なアタックぶりには結構鍛え抜かれた迫真味や揺るぎない巧緻さがみなぎっているが、芸風としては硬派軒昂であるにとどまらず歌心にも決して不足のない、甘さに流されぬ形での繊細なリリシズム表現にさすが年季の入った奥深さがしっかりと発揮されていて、スタイルは全く違うものの例えば1960年代のフリー・ブローイング時代のマイルスとかにもどこか通じるダーク&ビタースウィートな鬼気を帯びた(なおかつ理知的にコントロールされた)浪漫描写にも、これまた得難い煌めきがあって絶品。山口の壮絶なまでの活躍が何はさておき圧倒的だが、片倉(p)のモーダル・ブルージーな熱っぽくわりかし男前なガッシリした完全燃焼の強壮猛襲や、本田(ds)のドシャバシャとけたたましく迫る爆発ぶり、小牧(b)の分厚く図太いヘヴィーなウネり唸り様、といった辺りもそれぞれに旨味濃く光っている。
1. Sequel To A Dream
2. Evening
3. Let Your Mind Alone
4. Thalia
5. True Face
6. Viento
7. Empty Mirror
8. 遠い約束(Toi Yakusoku) (ss & p duo)
山口 真文 (soprano saxophone)
片倉 真由子 (piano)
小牧 良平 (bass except 8)
本田 珠也 (drums except 8)
2023年7月11日,12日 NK SOUND TOKYO(東京都新宿区四谷4丁目)録音
レーベル:
Days of Delight
在庫有り
国内制作CD