★フランス・シーンで活躍するピアニスト:デクスター・ゴールドバーグ(デズテル・ゴルベール?)の、5年ぶりとなるニュー・アルバム=トリオを基本にラスト1曲ではヴァイオリンも加わってくるという体制での一編。
★ゴツンと固く小石をぶつけてくるようであり、並行して滑らかな流麗さを垣間見せるところもある、キレと光沢感ある明晰タッチのピアノが、迫力満点のダイナミズム傾向を基盤としながら、ブルージーな吟醸的小節やクール・スマートなまろやかめのメロディック・フレーズも適所適量盛り込んで、トータルとしてはさほど甘すぎない匙加減で小気味のいいグルーヴ・サウンドに仕上げた、体質的には抒情派アクション・タイプの敏活プレイを重みをもって軽快に紡いでブレのないテイスティーな魅力を放ち、軟体的な生き物のように絡みついてくるベースや、ドシャバシャ・ドコドコとヴォリューム充分に(適宜騒々しく)迫るドラム、らの中々機略縦横なるサポートもスリリングに妙味を際立たせた、全般にストレートアヘッドなモーダル・バップらしさと程良いリリシズムの融け合った闊達音空間をノリよく愉しませる好演内容。
★一定のハードな力学理念に根づいた立ち回りの迫真性ならびに骨太のグルーヴ感溢れるバピッシュ・スウィンギン熱演が、陰影豊かでビタースウィートな歌心も仄めかしながら歯切れよく展開してゆき、弾性に富む粘っこいダルドッソ(b)やけたたましかったり摺り足で躙り寄ったりのパニエ(ds)、のゲリラ性ある攻勢に上手く触発されながら、ゴールドバーグ(p)の真っ当さと独創性を微細に錯綜させたかの如きアドリブ妙技が、生鮮度抜群の超フレッシュな見せ場を飾って爽快だ。
→殺陣的なアクション手法の根幹を成しているのはハンコックの流れを汲んだ半パーカッシヴ・スタイルで、これにより先ずは硬派モード系ハード・バップ・ジャズの正統らしい鋭角的でダイナミックなノリや骨芯の堅牢さ、攻撃的スリル等がしっかり齎されるが、その最中に挿入される抒情的アプローチが殊の外ユニークで、ヒンヤリ冷涼な細めのタッチで奏でられるメディテイティヴなややチェンバーっぽくもある幻想的フレージングや、マッコイ辺りとは全く趣を異とするパッションを孕んだスピリチュアルな哀愁漂う行き方など、いずれも現代ヨーロッパ浪漫派・耽美派の類型から著しく外れた、いい意味でちょっと摑みどころのないその自由で飄遊するかのようなリリシズム表現・ポエティシズム表現にこそ本作の真髄あり、と思わせる誰にも似ていない確たる説得力が認められ、とりわけ清新な驚きと感動が味わえる。アッパレ。これはちょっと甘く見てました。この機会に人生を考え直します。
Side A:
1. Cherry's Waltz
2. Time Remembered
3. Caliboudja
4. The Leap
Side B:
1. Strange Oasis
2. One For Ahmad
3. Nirvana
4. Camille
Dexter Goldberg (piano)
Clément Daldosso (bass)
Raphaël Pannier (drums)
Mathias Lévy (violin on B-4)
2022年11月25-27日フランス-ヴィユタヌーズ(Villetaneuse)のMidiLive studios録音
レーベル:
Jazz&People
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