CATFISH RECORDS

★Rune Grammofon諸作等で知られるノルウェーの個性派敏腕ピアニスト：エスペン・エリクセン率いる鉄壁不動のレギュラー・トリオと、英国ジャズ界を代表するヴェテラン・テナーサックス名手アンディー・シェパード(1957年英国ウィルトシャーのウォーミンスター生まれ)とは、2016年にロンドンで初共演して以来度々コラボを重ねてきたが、今回はそのカルテット編成でオスロのスタジオに入ってのエリクセン作オリジナル曲集。

★透明感と清涼な潤いに富み、端正でありつつ歯切れのいい硬質性やシャープネスも備わった結構骨太い鮮明タッチのピアノが、繊細かつまろやかに浪漫を歌うと同時に敏捷で鋭角的なダイナミズムも自ずと表すアクティヴ・プレイを精緻に綴って、音空間全体に絶えず豊かな詩情とグルーヴを齎し、一方、締まりの利いた逞しい風合いと柔らかな丸みを併せ持った熟成感ある旨口トーンのテナーが、どこか牧歌的おおらかさを漂わせつつ旋律美とポエティシズムそしてバピッシュな躍動力に満ちたマイルド・テイストのリリカル・ブロウを紡ぎ、堂々と風格も充分に一座の花形役を担いきった、変幻自在に駆け巡るベース&ドラムの滑脱活躍も奏効してフレッシュなスリルを途切れさせず、奥行きある哀愁世界を中々芳醇に愉しませる爽やかな好演内容。

★今時らしくコンテンポラリーめのリズミカル・ビートに乗せ、歌心や詩的風趣とノリのよさを何より重んじる、一貫して抒情指向の晴れやかかつ和やかなメロディアス&ハートウォーミング快演がイキイキと展開され、北欧流の微妙に物悲しいフォーク風情やヒンヤリ冷たいクーリッシュな感触を体現するエリクセン(p)と、より豪放磊落で雄渾のスケールを湛えた力強いロマネスク・ポエムを悠然と歌い上げるタフなシェパード(ts)、とが鮮やかにコントラストを成しながら互角に拮抗して、一瞬も飽きさせずまた一音も無駄のないスリリングで清新度抜群の濃密なる道程が確固と創出されており、見事。

★シェパード(ts)の、太くガッシリしたしなやかスムースな音色で、ハード・ドライヴ感も満点に勇ましく渦を巻く現代流バップ・テナーの真髄たるダイナミック・アクションを雄々しく繰り出し、並行してシェパード一流の吟遊牧歌詩人的メロディー・センスも遺憾なく揮った、トータルとしてはメロウでハートフルで気さくな人情味一杯のポップめテイスティー吹鳴キャラが1ミリのブレもなく明澄に立ち現れていて、その懐の深い独自の魅力は卓抜で、かたやエリクセン(p)の、シェパードにも増して耽美派指向のロマンティストであり、キレのある鋭利なソリッド・タッチを活かして折り目正しく冷涼に様式美を体現するクールイスト気質である(なおかつブルース的局面にあってはわりかしファンキーな粋筋の節回しも披露して上手く意表を衝いてくる)、そうした深遠風雅な芸風のあり様がまた、この上なく瑞々しいリフレッシュ効果を生んでいて絶品だ。

1. The Other Side Of Melancholy
2. Endless
3. As Good As It Gets
4. Sticks And Stones
5. Pressure
6. The American
7. Drifting Clouds

Andy Sheppard (tenor saxophone)
Espen Eriksen (piano, compositions)
Lars Tormod Jenset (bass)
Andreas Bye (drums)

ノルウェー-オスロのPropeller Music Division録音
2023年ノルウェー作品

レーベル：Rune Grammofon

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デジパック仕様CD