★(母国)フランス-ナントでクラシック・パーカッションを学んだ後、アメリカへ渡り、バークリー音大(ダレン・バレットに師事)やセロニアス・モンク・インスティテュート(ハービー・ハンコック、クインシー・ジョーンズらに師事)で更に研鑽を積んで、現在はNYブルックリンを拠点として活動しているという若手ヴィブラフォン期待のホープ:シモン・ムーリエ(1994年フランスのパリ生まれ)の、リーダー・アルバム4作目。ベース&ドラムとの鉄壁不動のレギュラー・トリオを率いて有名ジャズメン・オリジナルやスタンダードを演奏。
★清涼感や透明感と濃い陰影とが自然に混ざり合った滑らかな響きを呈するヴィブラフォンが、バップ&ブルースの伝統的イディオムに則った結構シブめの吟醸アクション・プレイをスウィンギンかつパーカッシヴに繰り出して、ちょっと燻し銀の趣あるスモーキー・グルーヴィーな芯の通った魅力を放ち、ドッシリ構えた安定律動性と機略縦横の遊撃力を併せ持つドラム&ベースの的確なサポートも鮮やかにツボにハマッた、全編ヴィブラフォン・ジャズならではのクーリッシュ&テイスティーな人情娯楽世界をひたすら小気味よく愉しませる快演内容。
★歌心とスイング感に重点を絞り、ブルース・フィーリングやバップ・スピリットも巧まず豊富に有した、ごく親しみやすくノリのいい躍動型リリカル指向の直球ハード・バピッシュ演奏が一定の和やかさを伴いつつ溌溂と展開され、アレマンノ(b)&キム(ds)の揺るぎない職人芸的バックアップにガッチリ支えられ、触発されて、ムーリエ(vib)の、流麗滑脱で表情豊かなアドリブ奮戦が旨味たっぷりに華やいだ見せ場を飾って全くゴキゲンだ。
→芸幅的にはジャズ・ヴィブラフォンの全歴史を網羅していると思われるが、どちらかと云うとゲイリー・バートン以降のコンテンポラリー・スタイルよりもボビー・ハッチャーソン以前、つまりハッチャーソンやミルト・ジャクソンの流儀に倣ったブルージー・バップ奏法が根幹に据えられて、粋渋さと理知性を自然にミックスした情味溢れるアプローチにアジな真価を発揮しており、しかしながらそれ以前に先ず音色そのものの独自性、即ち、潤い豊かでありながら同時に細かく途切れるような乾いた感触をも垣間見せてポコポコと鳴るそのトーンは、レッド・ノーヴォを今日化したような適度に素朴な打楽器的イメージを強く顕していて、そうした音響の特徴が際立って中々ユニークな個性が打ち出されており、そのアーシー・ソウルフル&ジェントル・デリシャスな正統派筋のプレイ・スタイルと相まってノリノリにして心和む旨口サウンドが立ち現れ、何とも蠱惑的ですらある。お見事。
1. Ecaroh (Horace Silver)
2. Inception (McCoy Tyner)
3. Desafinado (Antônio Carlos Jobim)
4. Peggy's Blue Skylight (Charles Mingus)
5. Lush Life (Billy Strayhorn) (solo vib)
6. Pfrancing (Miles Davis)
7. Lost (Wayne Shorter)
8. You Must Believe In Spring (Michel Legrand)
9. RC (Simon Moullier)
Simon Moullier (vibraphone)
Luca Alemanno (bass except 5)
Jongkuk Kim (drums except 5)
2023年作品
レーベル:
Fresh Sound New Talent
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