CATFISH RECORDS

★RDCやCristal、Ilona等よりの諸作に好評を集めてきた、フランスのキャリア豊富な個性派ピアニスト：ティエリー・マイヤール(1966年フランスのピュトー生まれ)が、ソロ・ピアノに徹底したこだわりを見せるマルセイユの新興レーベル:Paradis Improviséのソロ・ピアノ・シリーズに登場。

★端正で冷涼な潤いと透明感に溢れ、がしかし打鍵は中々強固で歯切れのいい鋭角性〜クッキリ鮮明な輪郭を湛えた、硬質クリアー・タッチのピアノが、心象風景をスケッチするような繊細で耽美的なロマンティシズムや機微に富むも決して内省傾向に陥ることなく、あくまで明快な開放型の娯楽理念や歌謡性に貫かれたクーリッシュ&メロディックな抒情指向プレイを慎重に、精緻に、そして簡潔に綴って瑞々しくも幽玄深い妙味を揮った、ニュアンス濃やかな充実内容。

★1曲1曲は手短にまとめられた快テンポで進む概ねバラード・コンセプト主体の落ち着きと節度ある行き方が続き、静穏でスローリーな如何にもバラード然たるトラックの他、より動きのやや烈しいワルツ調、ボッサ調、情熱的でエネルギッシュなバラードのドラマティック・アクション変化形っぽいものなどもあって、一本調子にならぬメリハリの利いた道程の中で、メロディーや和声の端麗美、奥行き豊かな詩的情緒、加えてモダン・バピッシュ・ピアノならではのダイナミズム、といった要素それぞれを120%活かしきったマイヤール一流の哀愁漂うアドリブ妙技が、結構スッキリと生鮮度抜群に冴え渡って、清々しい気分でその典雅な流れを愉しませる。

★基本は現代ヨーロッパ流リリカル派の正統らしい、しっとりとセンシティヴに憂き浪漫や詩情を掬い取ってゆく、クールにして丹念な誠心こもったメランコリー風景の描写であったり、幾分牧歌的でフォーキーなマイルド風味のおおらか節であったりと、そうした気品やエレガンス充分のロマネスク&ファンタジックな語り口に揺るぎない本領を見せるが、ディテールの奏法に関しては欧州型唯美主義者たる文体にとどまらず、ハード・バップに由来したわりかし豪快で力学的＝ダイナミックな骨太のアクション解釈と、クラシック・ピアノに根を張った荘厳で精確巧緻な半幾何学的アーキテクチュラル技法、とがそれぞれ半々ずつぐらい活用されているという辺りも上手い抑揚づけ効果、色彩変化効果をスリリングに生んでいて新味があり、またアルバム全体が半ば一つの大河的作劇ストーリー風にまとめられている感じもあったり、などといったその構成センスの周到さ並びに行間深さにも大いにウナるものがある。

01. Le Gendarme De St Tropez (2:09)
02. La Bataille De Trans (2:43)
03. Marion Ne M'aimait Pas (3:26)
04. Danny Boy (3:27)
05. Forêt Norvégienne (4:25)
06. Les Elfes (3:09)
07. Valse N°2 (3:07)
08. Ne Me Quitte Pas (4:15)
09. Someday My Prince Will Come (3:44)
10. Au Fil Du Danube (2:03)
11. Les Rivages Du Monde (3:25)
12. Le Dernier Des Vikings (2:43)
13. Les Feuilles Mortes (3:39)
14. La Fin Du Monde (2:11)
15. Le Vahalla (2:45)
16. Asgard (3:14)

Thierry Maillard (piano)

2021年9月22日フランス-マルセイユのParadis Improvisé録音
2023年フランス作品

レーベル：Paradis Improvisé

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三つ折りデジパック仕様CD