CATFISH RECORDS

★1995年よりニューヨーク・シーンで活動し、アルバムも着々と発表して評判を上げてきた、フランスにルーツを持つテナーサックスの中堅実力者：ジェローム・サバー(1973年フランスのパリ生まれ)の、今回は、大御所ケニー・バロン(p)を迎えたカルテット基本での気合と寛ぎが交錯するアジな一編。

★丸み豊富でヒネりも利いた、一聴柔らかな中にキュッと鋭い締まり・絞りが顔を出すところもあるニュアンス十二分な旨口トーンのテナーが、力強くダイナミックに渦巻きウェイヴを描く風なハード・ドライヴ感満点にして肩の力の抜けたレイドバック・ムード漂う、雄々しくもどこかけだるい哀愁歌謡的スモーキー・ブロウを幾分ゆったり悠然と繰り出して何とも粋渋な華を成し、一方、堅牢でソリッド&スクエアーながら絶妙に抑制・制御を効かせた殺陣ワザで和やかに追撃してくるピアノの、燻し銀の趣ある助演も、抑え役っぽく全体に上手く硬化作用を齎した、全編に渡り至って真っ当な人情娯楽派の王道を行く直球ハード・バップ快演が続いて小気味よくノセ、またホッと憩わせてくれる安心の美味内容。

★歌心とスイング感にポイントを絞り、根底には終始インティメイトな和気あいあいのリラクゼーションや温もり、安穏さが息づいた、優しくまろやかでいて歯切れよい敏活さにも事欠かぬ、そしてブルース・フィーリングたっぷりのマイルド・テイスティーな親しみやすいリリカル奏演、が落ち着いた調子で滑脱に展開され、主役:サバー(ts)の音響そのものに顕れる幾分煤けくぐもった風合いも奏効してトータルな音空間には微妙な薄曇り感が好もしく蔓延する、レイジー・デカダンな道程の中で、サバー(ts)の半ば脱力気味に伸び伸びと舞い泳ぐ寛ぎプレイや、より鋭角で固い質感のダイナミズム表現でもってこれに拮抗するバロン(p)の懐深い相方ぶり、が旨さ芳醇なる盛り上がりを呈して全く極楽気分だ。

★サバー(ts)の、モード色は殆ど感じさせずモブレーやロリンズ、デクスター辺りに通じる純正ハード・バップ・スタイルを身上とし、またズートやゲッツに接近した流線形的スムース奏法に推移するところも多々ある(むしろこちらの方にこそ本領がある模様?)、アウトラインとしては明快晴朗でいて独特の倦怠感・疲労感の仄めく一貫して自然体のシブ〜い吹鳴キャラがコク豊かに悠々と確立されていて"お見事!"で、かたやバロン(p)の、一切のリキみを解いて無欲恬淡に「型」を重んじた硬質堅固な立ち回りに粛々と終始する、ちょっと達観したかの如きあくまで平易なストイック・プレイがまた、奥行き無限の味わいを湛えていて絶品。

1. Vintage 5:22 (quartet)
2. On A Misty Night 7:26 (quartet)
3. A Flower Is A Lovesome Thing 5:40 (ts & p duo)
4. Elson's Energy 4:39 (quartet)
5. Slay The Giant 5:29 (quartet)
6. We See 5:14 (ts & p duo)
7. Ask Me Now 7:04 (ts & p duo)

Jerome Sabbagh(Jérôme Sabbagh) (tenor saxophone)
Kenny Barron (piano)
Joe Martin (bass except 3, 6, 7)
Johnathan Blake (drums except 3, 6, 7)

2020年11月5日米ニューヨーク州マウント・ヴァーノンのOktaven Audio録音

レーベル：Sunnyside

在庫有り
デジパック仕様CD