★熊本や福岡さらに沖縄で精力的に演奏活動を行い、自身のレーベル=CMSからの諸作に好評を博すも、先頃(2022年8月)惜しくも急逝した個性派ピアノの逸材:細川正彦の、これが遺作となってしまったトリオによる快調編。
★歯切れよくも折り目正しい精確巧緻さや端麗美を湛えた、骨芯は中々太くスタンスにブレるところのない、一音一音がクッキリと鮮明な輪郭で響鳴する硬質クリアー・タッチのピアノが、マイルド・ロマンティックなポエティシズムに溢れると同時にバップ・ピアノならではの鋭角的ダイナミズムやキレのあるグルーヴ感、ブルージーな吟醸テイストも自ずと備わった、巧まずしてバランス感覚絶妙の基本は抒情指向な躍動型メロディック・プレイをしっかりした音量で確固と紡いで、清々しくも雄々しく壮快な見せ場を飾り、随所に浮かび上がっては弁舌巧みな唄いっぷりで座をさらう肉厚ベースや、安定律動力抜群にして変幻自在に多角的フェイント・スリルをもバッチリ醸成する匠のドラム、らの遊撃性あるサポートもピタリと濃やかにツボにハマッた、全体を通じリリカル派ピアノ・トリオの正統らしいごく明快でエンターテイニングな邁進が続いて、ノリよくも情感豊かに愉しませてくれる、何げに密度の高い好演内容。
★歌心とスイング感を何より大切にし、モダン・ジャズの伝統に深く根ざしたブルース・フィーリングやバップ・スピリットも潤沢に有した、トータルなアウトラインとしてはダイナミックさの中にも詩人気質っぽいリリシズムや哀愁的情緒を絶やさぬ、至って親しみやすい美旋律の泉たるポエティック・アクション奏演が結構精悍に綴られてゆき、図太くドライヴ感満点の山本(b)や、パンチを利かせてシャープかつ敏捷にアタックしてくるカプテイン(ds)、の各々活躍も頼もしく的確にグルーヴ効果を発揮して濃い魅力を際立たせ、彼らのヴォリューム感あるタフなバックアップに上手く触発されながら、主役を担う細川(p)の、先ずはその一つ一つの打鍵の強固さ・分厚さ・揺るぎなさ、そしてキレのよさに文句なく圧倒される、ポジティヴな勢いとエモーションに満ちた敏活アドリブ妙技が卓抜なる鮮度で冴え渡っていて全く素晴らしい。
→エヴァンス、ハンコック、コリアらの成果を十二分に踏まえ、しかし最早その出どころがどうのとは想起させない、つまり誰の真似事でもない堂々たる個性がある種の威風や貫禄をもって確立されており、モード以降の抒情派ピアノの正統たる重みと力学性を多分に含んだ強堅なアクティヴ浪漫スタイルに軸足を置き、そこへ細川独自のマイルド・テンダーな耽美センスやクールイズム或いはスマートネスが自然に組み入れられ、結果、唯一無二の切実さと瑞々しさに貫かれた何とも爽やかなスッキリとした感動(&昂揚)が齎される、という、そうした力強くも清新この上なき青嵐の気を立ち昇らせる弾鳴のあり様には、理屈抜きで胸躍り心洗われる思いだ。
01. W (Hosokawa) 5:37
02. Morinonaka (Hosokawa) 5:57
03. Delusion (Satoru Yamamoto) 7:02
04. Bud Powell (Chick Corea) 8:37
05. Aki no Fu (Hosokawa) 7:51
06. Singing at Full House (Hosokawa,Yamamoto,Kaptain) 4:33
07. Aki no Fu Take 2 (Hosokawa) 6:27 For Yasuhiro Yamaguchi
08. Waltz for Debby (Bill Evans) 9:07
09. I Loves You Porgy (George Gershwin) 11:53
10. Danny Boy (Traditional) 6:58
Masahiko Hosokawa 細川 正彦 (piano)
Satoru Yamamoto 山本 学 (double bass)
Sebastiaan Kaptein セバスティアン・カプテイン (drums)
2021年8月名古屋 Full House録音
レーベル:
CMS (自主製作)
在庫有り
国内自主製作CD
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