CATFISH RECORDS

★ニューヨーク→パリでの活動を経て母国デンマークへ戻り(2010年)、地道に更なる研鑽を重ねてきた国際派の人気ヴェテラン・ピアニスト：ニールス・ラン・ドーキー(1963年デンマークのコペンハーゲン生まれ)の、今回はトリオ編成によるデンマークのルイジアナ近代美術館での公演の模様を捉えたライヴ・アルバム。

★本国ではLP(2枚組)のみでのリリースのところ日本独自で寺島レコードより世界唯一のCD化(ボーナス・トラック1曲追加)。

★端正で落ち着きや安定性を感じさせると同時に鋭いキレのよさや適度な尖り感をも湛えた、澄みきったクリスタルの如き潤いある鮮明タッチのピアノが、マイルドな牧歌風の詩歌を詠むような半フォーキー節であったり、米製歌物路線の正統っぽい寛いだまろやかな風合いの内側から仄かな物悲しさやブルース由来のアーシー・テイストを滲ませる熟成されたバラード表現であったり、一転して歯切れよく敏捷敏活に飛び跳ね躍動する精悍なダイナミック・スウィンギン・アクションであったりと、一貫して旋律や和声の端麗美ならびに詩的情緒性を保った上で滑脱にそのフレージング〜語り口を変移させてゆく、基本はあくまでリリカル指向のアクティヴィティ溢れるメロディック・プレイをイキイキと紡いで何とも爽やかな華を成し、随所に出張ってきては情魂味こってりの雄弁なウネウネ攻勢を見せる重厚ベースや、きっちりツボを心得て黙々粛々と的確なグルーヴ&スリルを提供する瞬発力に長けた闊達ドラム、らの働きもハマるべきところへピタリとハマりきった、全体を通じ現代抒情派ピアノ・トリオの鑑とも云えるごく親しみやすい娯楽的快演が続いて、清やかに魅了するさりげなくバッチリ練達した会心打内容。

★歌心とスイング感を何より重んじ、大方はポエティック体質だが硬派なハード・バップ・ジャズらしい立ち回りの迫真力や吟醸的ブルース・フレイヴァーも巧まずナチュラルに備わった、バランス感覚絶妙の徹頭徹尾明快直球なアクティヴ詩人肌の分かりやすくも味わい深い流麗奏演が展開してゆき、ドラム&ベースの何げに機略縦横で表情多彩なバックアップも頼もしく魅力を際立たせるメリハリに富んだ道程の中で、ドーキー(p)の、あくまで慌てず急がず泰然自若の態をもって磨き抜いた得意ワザの数々を悠々揮いきる、さすが伊達に年季を重ねてはいない自ずと熟達したアドリブ至芸がどこまでもスッキリと、それでいて行間余情豊かに冴え渡っていて、実にすがすがしく胸躍り心洗われる思いだ。

→エヴァンス、コリア、ジャレットらの奏法を消化しているものの最早誰にも似てはいない独自の"ドーキー流"ロマネスク・キャラが確立されている、そうしたヨーロッパの風土や民族性を感じさせる吟遊詩人っぽさも匂わせつつの耽美肌な端麗スウィート・メロディアス文体、を先ずは柱として唯一無二の妙味を揮い、並行して、決して甘さに流されることなくモード系バップ・ピアノの一典型らしい硬派な殺陣風の力学躍動節も適所適量盛り込んで文脈全体をキリッと引き締め、更にはブロック・コードを活かした「ファンキー」な寛ぎ小唄調フレーズやR&Bに接近したアーシー・グルーヴ語法といったブルース色濃い粋渋アプローチ、を第二の柱として度々インサートし上手く興を散らす、という、しかもそれをリキまぬ自然体で軽やかにやってのける、ゆとりを残した懐の広そうな弾鳴のあり様は大層風流でアジな魅惑性に満ちている。ウ〜ムお見事。

01. Children's Song
02. Farewell Song
03. Forever Frank
04. Where The Ocean Meets The Shore (solo piano)
05. Sent From Heaven
06. Just Do It
07. Yesterday's Future
08. Free At Last
09. Rough Edges
10. December (solo piano)
11. High Up North
12. Afterthought (solo piano)
13. Are You Coming With Me?
14. Misty Dawn
15. Yesterday's Future - studio version - (＊bonus track)

Niels Lan Doky (piano)
Tobias Dall (bass except 04,10,12)
Nikolaj Dall (drums except 04,10,12)

デンマークのルイジアナ近代美術館でのライヴ録音
2023年作品
＊Inner Adventures原盤(1st Time Records配給)

レーベル：寺島レコード

【解説】寺島靖国

在庫有り
国内制作 W紙ジャケット仕様CD