★Days of Delightよりの過去2作品がいずれも大好評だった、オールラウンドにして進歩派な辣腕ベーシスト:須川崇志(1982年群馬県伊勢崎市・旧境町生まれ)率いる2017年結成のジャパニーズ・ピアノ・トリオ=「Banksia Trio;バンクシア・トリオ」(with林正樹-p&石若駿-ds)の、待望のサード・アルバムが、今回は須川の自主レーベル:TSGW Recordsから登場。
★キレ味シャープかつ神妙な息遣いで精緻に空を斬り刻むドラムや、撥ね&ハジきを効かせて予断ならぬ突発音も織り混ぜつつヘヴィー&サスペンスフルにウネり躍るベース、らの遊撃力・奇襲力に富んだ躙り寄る(またある時は荒々しく捲し立てる)が如き鳴動が圧倒的緊迫とグルーヴを齎す中で、硬質そして骨太鋭角なストーン・タッチのピアノが、ある時はパーカッシヴ傾向の強い凹凸感にも溢れる半ばアブストラクトな幾何学的or記号的アクションを炸裂させ、ある時は息詰まる迫真スリルと吟醸的ブルース・テイストとを各々目一杯に掛け合わせた這うようなフレーズを吐き、またある時は至って親しみやすいマイルド・フォーキーな牧歌的バラード調のメロディック節もしくは妖しくたゆたい浮遊する風な内省的ロマンティシズム表現を繰り出す、といった具合で曲毎・場面毎に語調を違えた硬軟兼備の多彩なプレイを中々ドラマティックに綴って、鮮烈なる見せ場を飾りきった、全体を通じ先読みを許さない適宜意表を衝く急転回も頻発して新鮮味が途切れず大いに昂揚させてくれる、非常に密度の高い敢闘内容。
★ピアノを単独主役とした現代抒情派ピアノ・トリオの正統らしいメロディーの端麗さ&ポエティシズムが命の哀愁浪漫路線、を先ず一つの柱とし、それとは真逆に三者が対等に正三角形を織り成しつつ奔放苛烈なインプロヴィゼーションをぶつけ合うちょっとフリー寄りの抽象色濃い三つ巴ハード力学趣向、をもう一つの柱とした、大方はその両極端を往来する(どちらかと云うと前者がメイン)結構振り幅の大きな劇的熱演、が軒昂なる意気をみなぎらせて敏活に展開してゆき、剛柔混合の起伏満点な道程の中で、林(p)、須川(b,cello)、石若(ds)それぞれの生々しい気魄のこもった即興奮戦が殊の外フレッシュ・スリリングに眩い冴えを、キレを見せて素晴らしい。
★一座の筆頭花形たる林(p)の、繊細で端正だが甘すぎずクーリッシュに制御の利いた独特の妖気と翳を感じさせる耽美派ロマンティストぶりが、フリー曲でのわりかしブルージーでもあるメカニカル・ダイナミズム攻勢とともに一つ抜きん出た瑞々しい、それでいてソリッドさある研ぎ澄まされた魅力を鋭く放って卓越しており、
一方リーダー:須川(b,cello)の縦横無尽で変幻自在なハード・ドライヴィング・ベース・プレイ並びにチェロによる歌謡フィーリング全開のメロディスト面(もしくは現代クラシック寄りの荘厳でシリアスなピリッとした大立ち回り猛襲)、がまたさすがの風格とコク深さで確たる存在感を発揮、加えて石若(ds)の、瞬発力抜群で勢いあるパンチ・アタック力に溢れながらいかなる局面でもズバ抜けた精確巧緻さをもって極めて的確な音響を百発百中に提供する、何げに揺るぎない屋台骨の支え様も大層頼もしかったりと、各々十全に鍛え上げられ磨き抜かれた個人至芸の名場面はけっこう超絶なまでに充実している。
01. Drizzling Rain (Masabumi Kikuchi)
02. MASKS (Takashi Sugawa)
03. Abacus (Paul Motian)
04. Bird Flew By (Nick Drake)
05. Doppio Movimento (Masaki Hayashi)
06. Stefano (Takashi Sugawa)
07. Siciliano (Shun Ishiwaka)
08. Messe 1 (Shun Ishiwaka)
09. I Should Care (Axel Stordahl and Paul Weston)
10. Wonderful One (Paul Motian)
林 正樹 Masaki Hayashi (piano)
須川 崇志 Takashi Sugawa (bass) (cello on 05, 10)
石若 駿 Shun Ishiwaka (drums)
2022年10月東京 Studio Dedé録音
2023年日本作品
レーベル:TSGW Records (
自主製作)
在庫有り
CD