★福居良のトリオを皮切りに、渡辺貞夫のグループ、片倉真由子トリオ、小林陽一のジャパニーズ・ジャズ・メッセンジャーズ等々、シーン第一線で各方面から引っ張りダコの超多忙な活躍を続け、先頃はDays of Delightから渾身のソロ作を出して大いに気を吐いていた敏腕ベーシスト:粟谷巧(1985年生まれ、北海道北見市出身)の、今回は、同郷の若手連と組んだピアノ・トリオによる、六本木アルフィーでのライヴ編。
★バネとウネりが強力に利いていながら歯切れよくシャキシャキ・キビキビと弾み躍るようにウォーキングする肉厚ベースのハード・ドライヴィング鳴動に上手くプッシュされる恰好で、キレのある鋭角性や硬質感とスイスイ流れ泳ぐが如き滑らかさを併せ持った小石を転がす感じな鮮明タッチのピアノが、バップ・イディオムに則った殺陣の型っぽいソリッド&スクエアーなダイナミズム表現にアーシー小唄風の歌謡性やブルース傾向を多々加味し、時折スマートめのモーダル語法も織り混ぜて適宜変化をつける、という、基本はあくまでブルージー筋バップ・ピアノの正統らしい明朗快活プレイをテキパキ綴って粋でイナセな華を成し、精確巧緻に安定したリズムを刻むドラムや、ピアノのソロがひと区切りつくと威風満点に(猛然と?)浮かび上がってきてこってり芳醇かつ旋律センス抜群の雄弁なアドリブ熱演をカマしてくるベース、らの敢闘もハマるべきツボにピタリとハマりきった、全編ハード・バップ系ピアノ・トリオの一典型たる粋渋音世界がベースのソロやや多めというコク深さを増したスタイルでノリよく創出される、中々味わい濃厚でヘヴィーな歯応えも十二分の会心打内容。
★何より歌心とスイング感に重点が置かれ、伝統的なブルース感覚やバップ魂も豊富に有するが、その一方、表題の組曲辺りでは荘重なベース・ソロに始まって中盤頃までは結構スペイシーにたゆたい浮遊するようなモード系のインタープレイ物っぽい行き方を見せて、程好く転回メリハリも醸成される、そしてトータルなアウトラインとしてはハード・バピッシュ・テイストが過半を占め、より熱っぽくエネルギッシュなモーダル・アプローチも適所に適量組み入れられて飽きのこないドラマティックな道筋が形作られる、といった印象の、陰影豊かでシブ旨なメロディック&ダイナミック・スウィンギン驀進!が雄々しく展開され、大方の主役は山本(p)だがリーダー:粟谷(b)の活躍にも多々スポットの当てられる競合コースの中で、両者各々の腰を据えて伸びやかに本領を発揮する吟醸的インプロヴァイザーぶりが美味さ格別に豊饒地帯を形成してゴキゲンだ。
★山本(p)の、パウエルを出発点とする強固で堅牢そして鋭角的な骨太いバップ語法を先ずは根幹とし、そこへR・ガーランドやW・ケリー辺りに通じる玉転がしタッチのブロック・コード弾きを用いた軽妙でイキな寛ぎブルージー節をちょっと手癖っぽく織り込んで、旨味たっぷりのファンキー・ハード・バッパーたる弾鳴キャラを堂々と確立、しかしそれだけにとどまらず、マッコイやハンコックの成果を踏まえた風な力学的(半打楽器的)疾駆ぶりにも揺るぎないところを見せたり、全く独自の日本的な哀愁歌曲調の語り口に確たる妙味を揮ったりと、大凡はわりかし頑とした伝統派名人芸ふうでありながら何げにバッチリ幅・奥行きのあるそうした筆の滑らせ様は説得力も絶大で、かたや粟谷(b)の、歌の精神=メロディー才覚潤沢で実に表情多彩かつ濃いスピリチュアリティを内包したコク旨なる即興ワザも、スタンスのしっかりした包容力&雄渾スケールあるその統率力とともに何ともアジな魅力を放っていて好インパクト。
1. I Should Care (Axel Stordahl, Paul Weston)
2. Pretty Woodstock (Toshiaki Yamada)
3. Breeze Suite (Takumi Awaya)
a)Introduction
b)In The Forest
c)In The Ocean
4. Too Late Now (Burton Lane)
5. Mellow Dream (Ryo Fukui)
6. My One And Only Love (Guy Wood)
山本 拓真 Takuma Yamamoto (piano)
粟谷 巧 Takumi Awaya (bass)
高橋 直希 Naoki Takahashi (drums)
東京都港区六本木 Jazzhouse Alfieでのライヴ録音
2023年日本作品
レーベル:
LIVE at alfie
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国内制作・三面紙ジャケット仕様CD