CATFISH RECORDS

★日本のジャズ・シーン第一線で活躍するトップ・プレイヤー9名が、それぞれソロ・フォーマットで渾身の熱演を展開する各1曲ずつを収めたという、いずれも東京・南青山の岡本太郎記念館における元々はYouTube配信を意図して録られた「Days of Delight Atelier Concert」のストックから選りすぐりのソロ名演をコンパイルした強力オムニバス・アルバム。

　硬質かつちょっとグルーミーなトーンで鋭く闇を斬り裂き、烈しくもメディテイティヴにメランコリーの世界を描いてゆくが如き佐瀬悠輔(tp)。

　固く骨太な堅牢タッチでミンガスの影を追いつつも独自の黒い情念っぽさやブルース・テイストの濃い夜想詩的音景色を活写する平倉初音(p)。

　重みや分厚さを呈すると同時に妖しく翳った風合いのある音色で、切々とパッションやエモーションをスウィンギンに体現する古木佳祐(b)。

　細く甲高くキリッと尖った美しい音響をもって、思索性と憂愁的詩情に満ちた鳥のさえずりとかを想起させる切実で力強いブロウを繰り出す山口真文(ss)。

　端正できめ細かくもシャープネス溢れる透徹タッチで、美メロとダイナミズムも満点に心象風景の移ろいをスケッチしてゆく感じの劇的躍動型バラード・プレイを綴るデイヴィッド・ブライアント(p)。

　ヘヴィーウェイト感やワイドネスと不思議な浮遊感を併せ持った音色で、哀切かつミステリアス・ノワールにいななく風な咆哮を轟かす土井徳浩(bcl)。

　重厚な中にも鋭いキレのある鳴音をもって、不穏に蠢くサスペンス・アクション性としっかり吟醸されたブルージー・グルーヴィーなコク旨さ混在の太いドライヴを見せる高橋陸(b)。

　ウマみたっぷりの安定感ある落ち着いたストーン・タッチで、アーシー&ソウルフルなブルース風情も潤沢にナイト・ムードの寛ぎや安らぎを映し出す小粋さ十二分の石田衛(p)。

　絞りや引き締まり感とまろやかなソフトネスが巧まず絶妙に共存した美味トーンで、徒然気ままに波乗り遊泳を愉しむかのような滑脱吹奏を悠々と繰り出しつつ、バッチリ熟成したバップ・グルーヴと芳醇なブルース・テイストを振りまく池田篤(as)。

★といった具合で個性もカラーも様々な各自入魂の妙演が連続するが、その道程は色彩感に富んでいながら決してバラバラというわけではなく、全体を大雑把に括ってしまうなら極めて陰影の濃いある種の「瞑想的スピリチュアル・ジャズ」の世界が多彩に形を変えながら創出されている、ともとれる、わりかしコンセプチュアルめの濃密な仕上がりとなっており、とりわけ、序盤に現れてソリッド&シャープ&ダークの三拍子揃った快打をキメる佐瀬(tp)や、渋さの中に奥行き豊かな感動を確固と顕す平倉(p)、パワフルとアンニュイの兼ね合いが卓抜な山口(ss)、辺りの活躍がインパクトも中々強烈で、また反面、終盤に入ってトータルなアウトライン・イメージを"スピリチュアル"から"バップ&ブルース"の粋シブ方向へ急旋回させる石田(p)や池田(as)の働きもテイスティーに光っている。

1. 佐瀬 悠輔 (trumpet) / Free Improvisation
2. 平倉 初音 (piano) / Something For Charles Mingus
3. 古木 佳祐 (bass) / Free Improvisation
4. 山口 真文 (soprano saxophone) / Thalia
5. David Bryant (piano) / Original Medley
6. 土井 徳浩 (bass clarinet) / The Juniper Tree
7. 高橋 陸 (bass) / Free Improvisation
8. 石田 衛 (piano) / ピアタム
9. 池田 篤 (alto saxophone) / Bread And Soup

東京・岡本太郎記念館(東京都港区南青山)での録音
2023年日本作品

レーベル：Days of Delight

在庫有り

国内制作CD