★マーカス・プリンタップ、ニコラス・ペイトン、ドナルド・ハリスン、ロバート・グラスパー、アル・フォスターらのサイド等、主流派シーン第一線で超多忙な活躍を続けている当代オールラウンド黒人ベースの最高実力者のひとり:ヴィセント(ヴィセンティ?)・アーチャー(1975年米ニューヨーク州ウッドストック生まれ)の、ジェラルド・クレイトン(p)&ビル・ステュワート(ds)との磐石ピアノ・トリオによる満を持しての初リーダー・アルバム。
★しなやかな弾性をもって細かにハジくような、精緻さとドライヴ感に溢れた力強いベースの躍動や、キレ味シャープに空を刻み適宜凹凸&フェイントも利かせて躙り寄るドラムの響鳴、がグルーヴとスリルを的確に醸成してビシビシ触発してくる中で、歯切れよいクッキリ感と滑らかな流線形っぽさを併せ持つ潤い豊かにして翳のある端麗美味タッチのピアノが、立体的で半打楽器的なダイナミズム表現を先ずは根幹とし、そこへ歌謡性やブルース・フィーリングを適量反映したメロディック節も盛り込んで、トータルとしては決して甘くない陰影深くビターな風合いを呈したリリカル・アクション調の音景色を現出させ、幾分ストイックに華を成し、随所に浮かび上がっては少々粘っこくスピリチュアルな個人プレーをキメるベースの奮戦も好アクセントを形作った、全体を通じ独特の思索性も仄めく硬質なモーダル・バピッシュ奏演が続いて、絶えずフレッシュ・スリリングに鋭く昂揚させてくれる快投内容。
★硬派で凛然と引き締まった面持ちのシリアスめな語り口を基本身上としながら、並行して結構ポエティックな情緒性や旋律美をも自ずと有した、アウトライン・イメージはアクティヴ抒情派タイプのしかし絶妙の制御力で甘さの抑えられた敏活立ち回り快演、が滑脱に展開してゆき、アーチャー(b)やステュワート(ds)の瞬発力と意表性に長じた抜群のタイム感を持つグルーヴィーかつサスペンスフルなビート演出、に上手くノセられつつ、一座の花形役を担うクレイトン(p)の、充分抑制の利いたちょっとパステル・カラーっぽくもある恬淡さを含んだアドリブ妙技が、一切の破綻なくわりかしスマートに、行間深く冴え渡って何とも味わい豊かだ。
→ハンコックやコリアの力学面を踏襲しながらそれを敢えてライト化・薄味化したような、軽涼クールで微妙に翳りレイドバックした風な脱力感も漂う流麗躍動フレージング、には何とも云えぬ蠱惑性があり、ちょっとゴスペル・フォーキーな半牧歌的ブルース節やヨーロッパの詩情派とかにも通じる耽美的な哀愁ロマンティシズム描出、などで和ませかけるところもあるものの、こちらがホッと一息つく直前にマイルドになりすぎぬようサッとブレーキをかけて淡泊に引き揚げてゆく(そういう余裕のある引きっぷりが実に鮮やか!)、といった感じなその、ダーク・ハードボイルドでありソフト・ジェントルとも云える匙加減絶妙、バランス感覚卓抜な含蓄ある弾鳴のあり様は、何げに雅やかこの上なく幽玄深さ格別(→ここのところは、クレイトン自身に巧まざる異能が備わっているのか、それともリーダー:アーチャーの厳密な指揮統率力なのか、興味は尽きず気になって何度もリピート再生するハメに...!)。
★ラスト2トラックでのピアノの抜けたベース&ドラムのデュオによるウォームにして極めてバピッシュ・グルーヴィーな(かつややストイックそうな)スウィンギン妙演も、中々こってりコク旨なる余韻を残してこれがまたナイス。
01. Mirai
02. Round Comes Round
03. Space Acres
04. Lighthouse (solo bass)
05. Drop Of Dusk
06. 13/14
07. Message To A Friend (p & b duo)
08. Bye Nashville
09. It Takes Two To Know One (b & ds duo)
10. It Takes Two To Know One (alternate take) (b & ds duo)
Gerald Clayton (piano except 04,09,10) (electric piano on 01)
Vicente Archer (bass)
Bill Stewart (drums except 04,07)
2022年6月9日NYCブルックリンのThe Bunker Studios録音
レーベル:
Cellar Music (Cellar Live)
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見開き紙ジャケット仕様CD
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