★1950年代から現在に至るまで主流派シーン第一線で精力的かつ安定した活躍を続け、今やモダン・ジャズ黄金時代を知る貴重な存在となったハード・バップ・ドラムの生ける伝説:ルイス・ヘイズ(1937年米ミシガン州デトロイト生まれ)の、80代半ばを迎えてなお意気盛んなところを見せる、好評だった前作「Crisis」(2021年録音)と同一メンバーのオールスター・クインテットを率いての益々の快調編。
★キレ味シャープで爆発的勢いや敏速性・瞬発力に長じたドラムのパンチのあるイキイキとしたダイナミック・スウィンギン鳴動!に頼もしくプッシュされながら、幾分甲高いトーンでイナセに雄叫びを上げたり一転肉厚な低音を活かした重みあるハード・ドライヴィング咆哮をも繰り出すテナーや、音色は爽やかな清涼感一杯でいて熱いエモーションとブルース由来のコクに溢れた流麗ワザをキメるヴィブラフォン、あくまでソリッド&スクエアーな手堅く安定した定番プレイで抑え役を担うピアノ、らが色彩感も豊かにメリハリの利いたドラマティックな見せ場を繋いでゆく、全編王道中の王道たる真っ向勝負のハード・バップ大会が続いてノリよく昂揚させ、また豊かな旨味を満喫させてくれる会心打内容。
★歌心とスイング感にポイントを絞り込んだ、伝統的バップ・スピリット&ブルース・フィーリングも潤沢に備える、ひたすらシンプル・ストレートな潔し!の明朗娯楽活劇風驀進、が嬉々として愉しげに、おおらかに展開してゆき、風通しもよさげなエンタメ指向モダン・ジャズの鑑とも云うべき開放感ある行き方が正々堂々と決め込まれる中で、一座の花形的位置にあるエイブラハム・バートン(ts)や、隙あらば主役の座を奪取せんと結構猛烈に追撃してくるスティーヴ・ネルソン(vib)、「脇役」に徹しながらもその渋い存在感で思いの外目立っているデヴィッド・ヘイゼルタイン(p)、質素で地味なウネり波打ちドライヴ技の内側からジワリと芳醇なオーラを立ち昇らせるデズロン・ダグラス(b)、そして彼らの活躍を大きな包容力でもって温かく支えつつも独特の黒幕感〜親分気風みなぎった立ち振る舞いでそうした華々しいスター陣の序列を軽々と好もしくひっくり返しかねない、生鮮度も抜群なルイス・ヘイズ(ds)、といった具合でメンバー全員に際立った個性がみなぎりまた一丸となった行軍ぶり並びにソロ合戦が、どこまでも晴れやかに豊饒世界を創出していて全くゴキゲンだ。
★バートン(ts)の、冒頭曲辺りではアルト並に尖った音色を用いモーダルとファンキーの間を自在に往来するアグレッシヴ・ブロウでそういう猛々しめ熱血肌の人かと思わせておいて、がしかし2曲目以降は純ハード・バップ・テナーの正統スタイルに則った多少泥臭くもあるスモーキーな渦巻き吠えっぷりに転じて油断した敵の度胆を抜き?、時折ホンカーにも接近して見せる、というそのわりかし武骨なキャラがこってりテイスティーに光っており、一方ネルソン(vib)の、クーリッシュな洗練さ溢れる音響とは裏腹にホットなパッションほとばしったアーシー&ソウルフルこの上なしの吟醸感満点なマレット捌きがまた、"花形の席"を脅かさんばかり、即ちバートン(ts)を喰わんばかりの中々濃い妙味を揮っていて卓抜で、この二人の和気あいあい&溌溂とした友好的な攻防戦には殊の外デリシャス・グルーヴィーな魅力がある。ソロ・パートに浮上してくるや否や聴く者の背筋をピーンと伸ばさせてくれる、ヘイゼルタイン(p)の凛々しく硬質な弾奏も文句なしの高得点。
01. Exactly Right! 4:40
02. Is That So? 6:40
03. Hand In Glove 6:45
04. So Many Stars 5:35
05. Carmine's Bridge 5:01
06. Nefertiti 5:20
07. Mellow D 5:27
08. Theme For Ernie 5:41
09. Scarborough Fair 3:47
10. Ugetsu 6:03
Abraham Burton (tenor saxophone)
Steve Nelson (vibraphone)
David Hazeltine (piano)
Dezron Douglas (bass)
Louis Hayes (drums)
2022年12月録音
レーベル:
Savant
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