★その後楽器を持ち替えて"テナーサックスの重鎮"になることになる峰厚介(1944年東京都文京区湯島生まれ)は、1962年よりプロとして活動し、当初は専らアルトサックスをプレイ、1969年に菊地雅章のグループへ参加して一気に頭角を現し、その菊地(elp)を含むカルテットで自身は全編アルトサックスを吹く形で翌1970年に吹き込まれたのがこの初リーダー・アルバム(Philips FX-8508)であり、今回はオリジナル盤の仕様をできる限り忠実に再現した国内制作のアナログLP復刻となる。
★キュッと鋭く引き締まっていながら同時にまろやかなソフトネスを仄めかすところもある、何ともアジなトーンのアルトが熱いエモーションをハードボイルドに描破するが如き、パッショネート&アグレッシヴな咆哮を絞りを利かせつつ繰り出してピリッとしたソリッドかつ勇猛なる魅力を放ち、ファンクとバップの間を往来するエレピの妖しい暗躍や、雄弁に唄うスピリチュアルなベースのドライヴィング鳴動、モーレツに突撃スイングするドラムの豪快なパンチ・アタックぶり、もそれぞれ存在感濃厚に彩りを添えた、全編を通じ70年代初頭の硬派筋ならではの迫真力溢れるモード・ジャズ熱演が炸裂的に続いて、生々しく昂揚させてくれる密度も高い敢闘内容。
★菊地のエレピが上手く香味効果(+アクセント効果?)を齎しているものの、基本はあくまでストレートアヘッドなハード・バップ・ジャズの正統らしい勇壮で渋味あるダイナミック・スウィンギン奏演、が程好い粗さを伴いながら質実剛健げに展開してゆき、マクブラウン(ds)やリドリー(b)の精確巧緻さと豪放さを表裏一体化した抑揚豊かな立ち回りも抜群のグルーヴ&スリルを醸成する、メリハリに富んだ道程の中で、武勇肌の王道を突き進む峰(as)や幾分ミステリアスにブルージー・ファンク路線を行く菊地(elp)、らの腰を据えて伸びやかに完全燃焼するアドリブ奮戦が、白熱した盛り上がりを呈してエキサイティングこの上ない。
★峰(as)の、アルトの特性を活かし抑制を利かせて端正に、軽妙にウェイヴ音を吹き鳴らす面と、テナーに接近してより重厚でハード・ドライヴィングな雄叫びを上げ、吠えまくる激烈面、を的確に使い分けつつ中々ドラマティックに歩を進めてゆく語り口の粋が堂々と冴え渡っており、殊にテナー寄りアプローチにおける、ロリンズ的マイルド・ブルージー奏法とコルトレーン・ライクな熱情型モーダル・アクションを交錯させた旨味&切迫感混在の吹鳴には問答無用の圧倒的蠱惑力があり絶品。
★かたや菊地(elp)の、峰に比してややクールに醒めた思索性を漂わせながらスマートに筆を滑らせる、この当時のアップトゥデイトなテイスト演出を一手に担ったチョチョイのチョイの余裕ある立ち働きがまた実に鮮麗。
Side A:
1. Morning Tide モーニング・タイド
2. Love Talken ラブ・トークン
3. Straight No Chaser ストレイト・ノーチェイサー
Side B:
1. McPhee マクフィー
2. Little Abbi リトル・アビ
3. Bar'L'Len バールレン
峰 厚介 Kohsuke Mine (alto saxophone)
菊地 雅章 Masabumi Kikuchi (electric piano)
Larry Ridley (bass)
Lenny McBrowne (drums)
1970年6月17日&18日Victor Studio録音
(原盤:Philips FX-8508)
レーベル:
Universal Music Japan
在庫有り
国内制作・限定生産LP