CATFISH RECORDS

★精力的なライヴ活動の一方で音楽教職者として後進の指導・育成にも尽力している多才な個性派ピアニスト：若井優也(1986年愛知県名古屋市生まれ)の、4年ぶり・通算8作目のリーダー・アルバムとなる本盤は、前作「Will」(ライヴ)と同一の顔ぶれ、即ち楠井五月(b)＆石若駿(ds)との緊密トリオによる、自身やメンバーのオリジナル曲を奏したスタジオ・レコーディングの一編。

★端正で精緻かつゴツッとした岩石様の硬質骨太感も備わった、力強くも歯切れのいい鋭角的タッチのピアノが、半ば思索瞑想型の仄暗くアンニュイなリリシズム表現と、ソリッドに凹凸を描く力学指向のパーカッシヴな立ち回り技＝ダイナミズム攻勢、とをごくナチュラルに一体化させた、翳のあるビタースウィートな躍動型抒情派プレイを濃やかに、そして堅牢に紡いでちょっと文学的ともとれる奥深く憂き、味わい豊かな華を成し、豪快剛健でパンチのあるドラムの遊撃的轟鳴や、ウネウネと押し寄せる波の如く結構執拗に絡みついてくるベースのドライヴぶり、といったサイド2人の機略縦横のアタッキングなサポートも、安定したグルーヴと息詰まるスリルを的確に醸成して頼もしい魅力を放った、全般にコンテンポラリー・モード系リリカル・アクション指向ピアノ・トリオの真髄とも云うべき、全く独自の強固にして幽遠なる妙演が続いて、瑞々しくもサスペンスフルに感動させてくれる会心の充実内容。

★メロディーや和声の美ならびに詩的情緒性を大切にし、現代感覚溢れる変則律動的ノリのよさも周到に備わった、概ねアクティヴ詩人気質だが決して甘さに流されない引き締まった表情、或いは適度に曇った表情の中々シリアスな機動型ポエティック奏演が、当意即妙のインタープレイ要素も豊富に盛り込みつつフレッシュ・スリリングかつしっかりグルーヴィーに展開され、シャープなキレとアタックを利かせて敏捷に迫る石若(ds)や、肉厚な音響でヘヴィーに唄う楠井(b)、らの瞬発力に長けた自在なバックアップに上手く触発されながら、若井(p)の、表情多彩にしてその骨芯には一切ブレるところのない、何げに肝の据わった確たるアドリブ技が極めて密度の高い冴えを、キレを示していて卓抜だ。

→ハンコックやコリア、ジャレット、エヴァンスらの成果を踏まえるも、さほど似ているというわけでもなく彼らとはまた異なるワン&オンリーの弾鳴キャラが揺るぎなく確立されており、打楽器的・殺陣的なハードボイルド調の凸凹した強硬ダイナミック・フレージングと哀愁漂うロマネスクな詩情描写を巧まず自然にブレンドし、トータルなアウトラインとしては断じて甘くないピリッとスパイスの効いた独特のダークネス滲む苦味走った個性が凛々しく立ち現れていて、そのほぼ一貫してメディテイティヴな"文芸センス"に並々ならぬこだわりを感じさせる筆運びは実に清新そして含蓄豊かで、一種幽玄めいた滋味も香り絶品。
★一転して#8辺りでのオーソドックスなハード・バッパーぶり、スインガーぶり(但、いつしか手癖っぽく内省アクション詩人の芸風に推移してゆくが)がまたバッチリ渋旨で好印象。

1. 前夜祭
2. White Out
3. New Waltz
4. Interlude〜Poem #1
5. Poem #2
6. Waltz #11
7. Sansevieria
8. In Love In The Rain

若井 優也 (piano)
楠井 五月 (bass)
石若 駿 (drums)

2022年10月30-31日東京NK SOUND TOKYO(東京都新宿区四谷4丁目)録音

レーベル：Days of Delight

在庫有り
国内制作CD