★openmusic(自己レーベルか?)の近作が好評だった、パリを拠点に20年来主にフランスで活動を続ける進歩的個性派アルトサックスの才媛:仲野麻紀(1977年生まれ、15歳からサックスを始め、椿田薫、林栄一に師事した後、2002年渡仏、パリ市立音楽院に学び、パリのクラブを中心に自己のトリオやウード奏者ヤン・ピタールとのデュオ:Ky、多国籍バンド:バラ・デー=Bala Deeなどで精力的に活躍)の、念願だったという大御所ピアノ:渋谷毅(1939年旧東京府または旧東京市生まれ)との共演を実現させた、デュオや各々のソロの名演が聴かれる、2022年10月伊香保(群馬県渋川市)のワールド・ジャズ・ミュージアム21でのコンサートの模様を収めたライヴ・アルバム。
★ヒンヤリ冷涼かつ端正にウェイヴを描き、そよ風を吹かせるかのような、浮遊感と安定感がない交ぜになったアルトの滑脱ブロウが瑞々しい魅力を放ち、一方、肩の力を抜いてフリーハンド・スケッチに興じるようでいて巧まず無駄のない鮮やかな流れを創出するピアノの、歌心に満ちた折り目正しき弾奏も含蓄豊かで懐深い妙味を発揮、また一部での丁寧に語りかけてくる感じな女性ヴォーカルも艶やかな好アクセントを成した、全般に、親密そうでありながら緊張感のある二人のやりとりを極めて清新に愉しませる充実内容。
★インティメイトな和気や憩いのムードとピリッとした張り詰め気分がごく自然に共存した、落ち着きある穏やかな息遣いのリリカルな快演がハートウォーミングかつ丹念に展開され、両者のセンシティヴに呼吸を合わせた濃やかなアンサンブルと、各々の腰を据えてゆったり伸びやかに本領を振るうソロ妙技、とがその一音一音にしっかり魂のこもった豊作ぶりを見せていて、全く素晴らしい。
★仲野(as他)の、結構粋渋で吟醸味漂う純正ハード・バッパー面を垣間見せるところもあるが、その本性は妖しい夢幻の世界を彷徨うが如きちょっとダーク・エキゾティックな趣もある無重力遊泳風の瞑想的・内省的メランコリック吹奏、にこそ遺憾なく濃厚に顕れている感があり、自由即興度はかなり高めながら決してアブストラクトにはならず、聴く者の胸にじんわり染み入るその哀愁的情景の描き出され様は殊の外生鮮な感動を齎して卓抜。
★かたや渋谷(p)の、肩肘張らずに自然体でこの親睦セッションを心底楽しむ、といった感じの、どこか達観したようでもあるやや恬淡で間の妙を活かした語り口の粋が幽玄仄めくさすが熟練の冴えを示しており、その音色もフレーズもこの上なく美しい、軽みとウィット(&機微)に富んだ弾鳴のあり様は雅趣深さの極み。ラスト1曲での渋谷の朴訥なる弾き語りヴォーカルもほのぼのと余韻を残して好印象。
1. イスファハン (D. Ellington & B. Strayhorn)
2. デルフィーヌの歌 (ロシュフォールの恋人たち) (J. Demy & M. Legrand)
3. 芍薬 (仲野 麻紀) (solo alto saxophone)
4. ジムノペディN゚1 (E. Satie) (solo alto saxophone + fx)
5. 雨の中の兵隊 (H. Mancini)
- グッドバイ (板橋 文夫)
- 夜 (浅川 マキ)
- ラヴァー・マン (J. Davis, R. Ramirez & J. Sherman) (solo piano)
6. 星のためらい (仲野 麻紀)
7. ウスクダラ (Trad.)
8. ニューヨーク19 (J. Lewis)
- ラヴ・ミー (J. Lewis) (solo piano)
9. アマドコロ摘んだ春 (西尾 賢)
渋谷 毅 (piano except 3,4,6) (celesta on 6) (vocal on 9)
仲野 麻紀 (alto saxophone on 1,3,4,9) (vocal on 2,7,9) (soprano saxophone on 6) (metal-clarinet on 7) (fx on 4)
2022年10月9日伊香保(群馬県渋川市伊香保町)のWorld Jazz Museum 21でのライヴ録音
レーベル:
Nadja21 King International
在庫有り
見開き紙ジャケット仕様CD