★鬼才:高柳昌行(g)(1932年旧東京府の芝生まれ、1991年死去)の、1970年3月、既にフリー・インプロ・スタイルへ傾倒していた時期であったが、敢えてオーソドックスな純モダン・ジャズ・スタイルを貫き、渋谷毅のアレンジを得た渋谷(p)(但、ピアニストとしての渋谷の参加は5曲のみ)以下のリズム隊+ホーン・セクションを伴っての高柳流のクール・バップ演奏が聴かれる、東京スタジオセンターで吹き込まれた激レア傑作(ビクター SMJX 10096)、の初のアナログ復刻=受注生産限定盤。
★キレのよさや硬質感と同時に豊かな潤いや旨味をも漂わせる、しなやかな張りを呈した精悍そうなトーンのギターが、バップ・ギターの正統らしいカクカクとハード&スクエアーに折れ曲がるが如き殺陣風アクション文体に、マイルド&テンダーな哀愁とロマンティシズム溢れる美しい歌曲調フレージングを掛け合わせた、ごく正攻法の抒情的メロディック・プレイを敏活滑脱に綴って中々小粋で渋い華を成し、ベース、ドラム、ピアノらのツボを心得たハード・バピッシュな堅実サポートや、ホーン・セクションのムーディーであり適度に起爆剤っぽく意表も衝いてくる響鳴、もノリとスリルを的確に醸成してハマるべき処へピタリとハマッた、全編深い翳りを帯びたちょっと燻し銀風の質素にしてコクのある妙演が幾分ストイックげに続いて、何とも云えぬ雅趣や滋味を堪能させてくれる、余情に富んだ好演内容。
★インティメイトな和気や寛ぎが底流し、安定律動する精緻なスイング感もバッチリ備わった、1曲1曲は簡潔手短にまとめられるスッキリした後腐れなさそうな、やや淡泊ともとれる極めてシンプル・ストレートなハード・バップ快演が歯切れよく展開され、核となるギター+リズム陣の抑制の利いたモノクロームな趣と、より鮮やかなカラフルさや衝撃性を演出するホーン・アンサンブルの程好く派手めの風合い、とが上手いコントラストを成した何げにメリハリある道程の中で、高柳(g)の、あくまで誠実真摯にド真っ当なモダン・ジャズ・ギターの王道を歩み続ける、その謙虚で無欲で達観したようなオーソドキシー徹底重視のアドリブ妙技がしっかり硬派な、そして含蓄深き魅力を放って卓抜だ。
→基本としてはクリスチャン〜ケッセル系バップ・ギターの典型・正統然とした、ソリッド&ダイナミックな立ち回りの型に徹する感じの鋭角的アクション・フレージングを変らず拠り所として、暗影濃くシブ〜い結構芳醇なテイスティー・グルーヴ感をこってり満喫させるが、しかしそれだけにとどまらず、音色そのものの剃刀の如くシャープに尖った感触が奏効して、特にピアノ不在のトラックにおいては独特の乾いた"クール・サウンド"が毅然げに立ち現れてくるところもあったりと、アレンジ面も含めてそうしたさりげなく微細で半ドラマティックな変化のつけられ様にもまた得難い妙味がある。時折現れては控えめに、しかし適確覿面なるメロウ・テンダー節を軽々キメる渋谷(p)の助演もナイス・アクセント。
Side A
1. 過ぎし夏の思い出
2. フー・キャン・アイ・ターン・ツウ
3. ザット・オールド・フィーリング
4. プレリュード・イン・コーズ (solo guitar)
5. ロッカ・バイ・ユア・ベイビー
6. あなたなしでは
Side B
1. セイ・イット
2. 愚かなり我が心
3. モリタート
4. プレリュードNo.4 (solo guitar)
5. エンブレイサブル・ユー
高柳 昌行 (guitar)
渋谷 毅 (piano on A-1,A-2,B-1,B-2,B-5) (arrangement)
原田 政長 (bass except A-4,B-4)
山崎 弘 (drums except A-4,B-4)
horn section on A-1,2,3,5,B-1,2,3,5;
福島 照之 (trumpet, flugelhorn)
谷山 忠男 (trombone)
橋爪 智明 (trombone)
中島 正弘 (trombone)
黒沢 勝美 (french horn)
衛藤 幸雄 (flute)
1970年3月26日,29日東京スタジオセンター録音
(原盤:ビクター SMJX 10096)
レーベル:
Craftman Records
在庫有り
国内制作・受注生産限定盤LP(帯付)