★近年着実に評判を上げてきているスペインの寛ぎモダン・スイング派テナーサックスの逸材:エンリク・ペイドロの、本盤は、米西海岸に本拠を置くスイング派ギタリスト:ジョナサン・スタウトを迎えたクインテットによる3作目=今回はマドリードでのライヴ編。
★ソフトな丸みと太く分厚いヘヴィーウェイト感を湛えたテナーが、ちょっぴりけだるそうに身を揺さぶり躍る感じのレイジー・スモーキーな憂愁漂うブルージー・ブロウを滑脱に綴って、深々としたリラクゼーションと芳醇なコク旨さの極みとも云うべき美味し気持ちよい華を成し、粋なバピッシュ・グルーヴと燻し銀風の渋〜いレトロ・スイング・テイストを並行体現する軽妙ギターや、カッチリした精巧かつ鋭角な手堅いアクションを繰り出す職人芸的ピアノ、らもテナーとのコントラスト絶妙にばっちりアジな魅力を放った、全編を通じ気さくげな人情味と歯切れよいノリそして和気あいあいのウォームな憩いに満ちた親しみやすさ抜群の邁進が続いて、最高に心地よくホッと一息つかせてくれる安心の充実内容。
★歌心とスイング感に潔くポイントを絞り、ブルース・フィーリングも自ずと潤沢に備わった、極めてオーソドックスかつオールド・ファッションなスイング・ジャズの鑑たる単純明快直球型の娯楽指向演奏、が嬉々として愉しそうに、おおらかに開放感とインティメイトさをもって展開してゆき、1曲1曲はわりかし簡潔にまとめられた好テンポで小気味よく進行する道程の中、ピタリと息の合ったチームワーク〜グループ・エクスプレッションの鮮やかさも随所に揮われる一方、ペイドロ(ts)を筆頭とする銘々のジャム・セッション感覚で伸び伸びと自由闊達に泳ぎ回るソロ・リレー合戦コーナーが、スッキリかつこってりと清々しいまでの豊饒なる盛り上がりを呈して全くゴキゲンだ。
★ペイドロ(ts)の、例によってレスター・ヤングの流れを汲んだスイスイと波乗り様に流線形を描き続ける寛ぎスタイルを基調とし、ベン・ウェブスターに寄ったデカダンな倦怠感醸成や、コールマン・ホーキンス辺りにも底通する豪快武骨なダイナミック・アタック!なども適所適量盛り込んで上手くメリハリをつけ、トータルとしては概ねまろやかな風合いの悠然としたゆとりと包容力溢れる吹鳴キャラに堂々着地させているその、あくまで自然体であり巧まず懐の広いそうした個性のあり様は殊の外鮮麗でとりわけ傑出しており、また、スタウト(g)の、チャーリー・クリスチャンとフレディ・グリーンの間を往来しつつ時折バッキー・ピザレリっぽく聞こえてもくる表情に富んだ劇的活躍、並びにBusiakiewicz(p)のある時はテディ・ウィルソン似またある時はレッド・ガーランド調だったりの、堅実にファンキー・スイングする抑え役・引き締め役ぶり、といった辺りも確固とツボにハマッていて見事。明るく洒脱で元気溌剌な、胸躍り心温まるリラックス・セッション物の謹製品。
01. Sugar (That Baby Sugar Of Mine) (Pinkard/Mitchell) 4:26
02. Mill House Stomp (Stout) 3:11
03. Cherry (Redman/Gilbert) 4:08
04. I Can't Believe That You're In Love With Me (McHugh) 5:12
05. Hal's Hop (Stout) 3:12
06. After Hours At Big Mama Ballroom (Peidro) 5:51
07. Cookin' With Gas (Stout) 3:18
08. A Porter's Love Song (Johnson) 4:21
09. Jumpin' With M.G (Stout) 3:14
10. I'm Crazy 'bout My Baby (Waller) 3:18
11. Love Me Or Leave Me (Donaldson) 4:19
Enric Peidro (tenor saxophone)
Jonathan Stout (guitar)
Richard Busiakiewicz (piano)
Andres Lizon (double bass)
Michael Keul (drums)
2022年2月11&22日スペイン-マドリードのBig Mama Ballroomでのライヴ録音
レーベル:
Snibor
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