CATFISH RECORDS

★熟味を増しつつ清新な透明感も決して失わない、唯一無二の蠱惑的個性を持つ抒情派ピアノの人気才媛：西山瞳(1979年大阪府生まれ)の、今回は、クラリネット＆ベースとのチャレンジングな変則トリオによる、自身の出身地である大阪府枚方市に因んで作曲された楽曲群を中心に据えた、「ホームタウン」をコンセプトとするハートフルな自作オリジナル曲集。

★澄んだ水滴のような瑞々しい潤いを発散する端正できめの細かい、それでいて鋭角的キレのよさも備わったクリスタル風タッチのピアノが、ある時はアンニュイ&メランコリックに深遠典雅な憂愁的情景をしっとりと映し出し、またある時は意外や?極めてストレートアヘッド&ダイナミックに歯切れよく直進スイングするしっかりブルージー・バピッシュな吟醸ワザも繰り出すなど、中々メリハリの利いた一貫して旋律&和声の美しさを絶やさぬリリカル・プレイを流麗かつ丹念に綴って、風格十二分の揺るぎない魅力を放ち、一方、翳りを帯びた折り目正しいまろやかトーンでクール・スマート&ソウルフル・テイスティーに潤沢なるメロディスト&スインガーぶりを悠々と発揮するクラリネットの、洒脱さに満ちた活躍も別格花形然と芳醇に映え、また、柔和な温もりと力強いドライヴ感を併せ持った肉太ベースのウネり跳ね様も頼もしくグルーヴと旨味を強化しきった、全編その三位一体の鮮やかな妙演の連続で大いにノセ、そしてハートフルに深く和ませてくれる充実の快投内容。

★インティメイトな和気あいあいムードとキリッとした鋭利敏活なノリ具合が自然に並立し、親しみやすい歌心並びにブルース・フィーリングの体現を変らず第一義とした、スリリングなスウィンギン・アクション的側面もあるもののトータルなアウトラインとしては優しい寛ぎ感が勝った(←ドラムレスゆえの丸みあるソフトな音響傾向も奏効している)印象の、テンダネス溢れる抒情派演奏が滑脱に展開され、リズム・スタイルやテンポには刻々多様に変化のつけられる新鮮味の途切れない半ドラマティックな道程の中で、鈴木(cl)の闊達に動き回りながらも泰然自若の体を崩さない舞い泳ぎぶりと、西山(p)の殊の外デリケートなニュアンス・機微を滲ませると同時に堂々たる貫禄すら感じさせるさすがの練達至芸、とがあくまで親密な友好的空気感のもと愉しげに主役争いを演じて、何とも爽やかな豊饒世界を創出している。

★鈴木(cl)の、伸びやかで独特の端麗美を湛えた音色を確固と保ちつつ、マイルド&スムースな流線形〜ウェイヴを描き続ける感じの「歌謡性とブルース感覚の権化」たる、しかもまたちょっとエヴァンスをクラリネット化したようなロマンティシズムも濃厚に漂う吹鳴のあり様が、充分鍛え抜かれ充分吟醸されたコク旨な妙味を放っていて卓抜で、かたや西山(p)の、"いつもの西山路線"を更に深化させた陰影豊かで半内省文学的カラーや唯美センスに富むキレのいい哀愁フレージングが「孤高の煌めき」然とセンシティヴに冴え渡る他、本作ではわりかしメインストリーマー肌っぽい真っ向勝負のハード・バッパー面&旨口ブルース者面が溌溂と揮われるところも多分にあって、フレッシュに意表も衝いてくれるなど、そうした王者の余裕と懐の広さを感じさせる匠のワザの熟成ぶりが実に鮮麗に際立っており、そんな両人の落ち着きある和やかな拮抗具合が誠に清々しくアジな雅趣を醸し出していて絶品だ。

1. Fairy Tale フェアリー・テイル (作曲：西山瞳) (p & cl duo)
2. Take the “K” Train テイク・ザ・ケー・トレイン (作曲：西山瞳)
3. Yawn ヨーン (作曲：西山瞳)
4. Walking in the Park ウォーキング・イン・ザ・パーク (作曲：西山瞳)
5. 200km 200キロメートル (作曲：西山瞳)
6. HIRAKATA Park West ヒラカタ・パーク・ウェスト (作曲：西山瞳)
7. Our Memorial Attractions アワ・メモリアル・アトラクションズ (作曲：西山瞳)
8. Romance ロマンス (作曲：西山瞳) (p & cl duo)

⻄山 瞳 (ピアノ) Hitomi Nishiyama (piano)
鈴木 孝紀 (クラリネット) Takanori Suzuki (clarinet)
光岡 尚紀 (ベース except 1, 8) Naoki Mitsuoka (bass except 1, 8)

2022年4月18日 奈良 NMG Studio録音

レーベル：Meantone

在庫有り
国内制作・見開き紙ジャケット仕様CD