CATFISH RECORDS

★1970年に渡辺貞夫クインテットでプロ・デビュー後、日野皓正クインテット、森山威男カルテットに参加する一方、自己のトリオでの活動も開始、幅広い人脈の中で精力的に活躍を続け、一作毎にカラーの異なる意欲的アルバム群を次々と発表して高い評価と人気を得てきた、剛腕で鳴らす情魂肌の個性的ピアニスト：板橋文夫(1949年栃木県足利市生まれ)の、本盤は、岡田勉(b)＆楠本卓司(ds)との緊密トリオによる1976年3月東京・第一生命ホールでのライヴの模様を捉えた最初期(この前年にコジマ録音盤があるがリリース順でいけばこれが実質的な初リーダー・アルバムか?)の傑作(フォノグラム/Frasco原盤)の初CD(SHM-CD)化。

★強烈にバネを利かせて太く重厚にウネり躍るベースやパンチ力抜群のシャープ&カラフルな爆撃をカマしてくるドラム、のただならぬ"圧"を呈した捲し立て攻勢に上手く触発され、煽られながら、固く鋭角で骨芯の据わった岩石のようなソリッド・タッチのピアノが、生々しく激情ほとばしるエモーショナル&超ダイナミックなタフネス全開の勇猛アクション・プレイを屈強そうに繰り出し、或いはまた深い哀愁の内側から壮烈なるパッション・情動が滲み出てくるが如き硬派なバラード表現を見せて、味はこってり濃く雄渾たる壮大スケールを湛えた殊の外力強い無双の華を威風堂々と成した、全編血沸き肉躍る熱い感動が問答無用に駆け抜ける只事ではない敢闘内容。

★1970年代の硬派筋モード・ジャズの正統らしい、聴く者を理屈抜きでグイグイ昂揚させ圧倒する(もしくは捩じ伏せる?)少々荒削りでのっぴきならない気魄、凄味そして野性的エネルギーに満ち満ちた武骨肌・武勇肌の漢たる大熱演＝決死のスインギー驀進、がひたすら強靭に展開され、分厚いドライヴ感を提供する一方で結構雄弁に歌う岡田(b)や、局面に応じ手を代え品を代え意外性充分に色彩感やメリハリを演出する楠本(ds,per)、の遊撃ぶりも頼もしく際立つ壮快な興奮の絶えない道程の中で、板橋(p)の、ドッシリ腰を据えてありったけのパワーと気合を残らず注入し完全燃焼して悔いなし!迷いなし!、の前のめりな勢いに溢れたアドリブ奮戦が鬼神のような迫真力で冴え渡り、濃厚なる盛り上がりを呈していて全く見事。

★→基本はマッコイ・タイナーの影響下にある熱血勇猛派モーダル・ピアノの典型スタイルを変らず根幹とし、どこまでもパッショネート&スピリチュアルに力学的アクション手法をもって空間を音で埋め尽くす凄まじいまでのアツすぎる突撃!!!＝シーツ・オブ・サウンド大攻勢、を見せて大いに悶絶させてくれるが、反面、バラード調の#2辺りではそうした煮えたぎる熱情と並行して独特の奥深い日本的憂愁風景やロンリネス、メランコリーがわりかし慎重に音を選び適度に間を活かした筆致で余情豊かに描き出される(→先ず何よりこの曲そのものの美しさが抜群に光っており、これに浅川マキが歌詞をつけて持ち歌として歌っていた辺りのことからも、原コンポジションに確固と宿った圧倒的な"歌曲力"の卓越ぶり・ズバヌケぶりが分かろうってものサね)、という、あくまでその主軸は豪快なワイルド・アグレッシヴさにこそあるものの必ずしもそれ一辺倒でない幅が示されていて味わいは程好く多彩だ。

1. アリゲーター・ダンス
2. グッド・バイ
3. 濤

板橋 文夫 (piano)
岡田 勉 (bass)
楠本 卓司 (drums) (percussion on 3)

1976年3月1日 東京・第一生命ホールでのライヴ録音
ミニ解説：原田 和典

レーベル：Universal Music Japan

在庫有り
国内制作SHM-CD