★また一段と円熟味&貫禄を増してきた当代黒人モダン・ピアノの第一人者:サイラス・チェスナット(1963年メリーランド州ボルティモア生まれ)の、今回は、ピーター・ワシントン(b)&ルイス・ナッシュ(ds)との磐石トリオによる、2021年に亡くなった自身の父親マクドナルド・チェスナットに捧げられた一作。
★強固さと軽やかさを微細に交差させ融け合わせる風な、ニュアンスに富んだ表情ある美味タッチのピアノが、歯切れよくも流麗に吟醸感豊かなブルージー・スウィンギン・プレイを嬉々溌溂と紡いで、何とも小粋に、テイスティー・グルーヴィーにアジな華を成し、一方、歌謡フィーリング全開で唸るように唄う肉太ベースや、シャープで敏捷かつ精確な手堅いリズム刻みでピアノを援護する安定感抜群のドラム、らのツボを心得たサポートも実に頼もしく、そしてウマみたっぷりに魅力を際立たせた、全編ハートウォーミング&ダイナミックなド直球の進撃が連続してスカッと壮快にノセ、またホッとなごませてくれる優しさに溢れた豊饒内容。
★インティメイトな和気あいあいのリラクゼーションが変らず底流し、歌心とスイング感に潔くポイントを絞り込んだ、ブルース色も濃く気さくそうな人情味満点の「躍動型寛ぎ路線」っぽい純正ハード・バップ・タイプのリリカル快演、がイキイキと愉しげに展開され、どこまでも明快で親しみやすい大衆娯楽性を重んじるシンプル・ストレートな闊歩邁進が続く中、ナッシュ(ds)&ワシントン(b)の堅実にして芸の細かい卓抜なるバックアップにガッチリ支えられながら、チェスナット(p)の、いい意味でワンパターンに徹したかのような漆黒の歌いっぷりを貫くも、その一音一音からは大層多彩な機微が滲んでくる、感じの喜怒哀楽豊かな迷いなく全くブレていないアドリブ妙技が、さすが熟練した名人芸風に冴え渡って清々しい。
→肩の力を抜いて巧まぬ自然体調子の落ち着き・安らかさを保ちながら、軽涼な玉転がし風のブロック・コードを使った瀟洒味溢れるファンキー節と、より骨太く角張った燻し銀的な渋〜い殺陣風バップ・イディオム、の掛け合わせプレイを一貫して根幹に据え、ちょっと無欲そうにも感じられるひたすらアーシーでソウルフルなバピッシュ・ブルースの世界を風流に、芳醇に、そして飄々と形作り、バラードでは黒人教会音楽に由来したとも思しきスピリチュアルなアプローチも誠心こめて丁寧に垣間見せるその、黒さと軽みが身上の達観したような弾鳴のあり様は誠に雅趣深く胸に染みる。
01. Nippon Soul Connection (Cyrus Chestnut)
02. Thinking About You (Cyrus Chestnut)
03. Cubano Chant (Ray Bryant)
04. Baubles, Bangles And Beads (George Forrest / Robert Wright)
05. Yesterday (John Lennon / Paul McCartney)
06. I Must Tell Jesu (Elisha A. Hoffman) (solo piano)
07. Working Out Just Fine (Cyrus Chestnut)
08. There Will Never Be Another You (Mack Gordon / Harry Warren)
09. But Beautiful (Johnny Burke / Jimmy Van Heusen)
10. Epilogue (Cyrus Chestnut)
Cyrus Chestnut (piano)
Peter Washington (bass except 06)
Lewis Nash (drums except 06)
2021年12月14日ニューヨークシティのSear Sound録音
レーベル:
HighNote
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CD