★イスラエル・ジャズに影響を受けたという(近年のイスラエル勢の大進撃を受けて遂に現れるべくして現れた?)ユニークな日本人ピアノ・トリオ:"ニスカフ"(三重県出身の女性ピアニスト:藪野遥佳、静岡県出身のエレクトリック・ベーシスト:細谷紀彰、東京都出身のドラマー:中山健太郎の3人から成る)(細谷がリーダー格として音頭を取って2020年に結成された)の1stアルバム=オリジナル曲集。
★きめ細やかで端正な、一音一音がキラキラと瞬き煌めくかのような透明感あるクリアー・タッチのピアノが、「哀歌」的な旋律美とモーダル・ダイナミックなアクション性そしてちょっぴりエキゾティックなスピリチュアリティを掛け合わせた、敏活さの中に一定の落ち着きや節度を宿すリリカル指向の躍動的メロディック・プレイをイキイキと紡いで清新なる華を成し、一方、歯切れよくもバネを利かせてウネり波打ちつつ雄弁に歌う6弦エレキベースや、手数も多い速射絨毯爆撃を仕掛けてくるが如きドラム、らの各々しっかり濃い存在感を放つアタッキングなサポートもテイスティー・グルーヴィーに魅力を際立たせた、全編を通じ瑞々しく爽やかな気概に溢れる中々思い切りのいい敢闘が連続してスッキリと昂揚させてくれる会心打内容。
★現代流モーダル・ハード・バピッシュ・ピアノ・トリオの正統らしい行き方があくまで尊守されるが、作曲面における幾分イスラエルを意識したと思しき独特のフォーキー・スピリチュアル色もしくはニューエイジ系っぽさが適度にストレンジな妙味を成しており、そうした中で歌心とノリのよさを一貫して重視した抒情派タイプの快演が溌溂と展開されてゆき、当世らしくヴァラエティーに富んだコンテンポラリーなビートに乗せてのアクティヴ・リリカル進撃が続く途上、細谷(elb)や中山(ds)の軽やかでいて芸の細かい半遊撃型のバックアップに上手く触発されながら、主役を担う藪野(p)の、肩肘張らない自然体の穏やかさと熱く攻めたアグレッシヴさが表裏一体化したとも云うべき、メランコリックなアドリブ技が終始フレッシュに冴え渡って清々しい。
→本人の弁によれば(自身の弾奏スタイルに関しては)ビル・エヴァンスに最も強い影響を受けたとのことだが、実際ここでは、エヴァンス、ハンコック、マッコイ、チック辺りの奏法を十全に吸収消化して今日流にアップデートした、とでも云えそうな、どんなに激しい動きを見せていても耽美性や詩的ロマンティシズムを決して失うことのない、物悲しくも力強いパッションみなぎった独自のポエティック・フレージングが吹き抜ける青嵐のように生鮮この上なき魅力を放っており、時には祈りを思わせる厳かなメディテーショナル節やちょっとニューエイジ・ミュージックっぽくもあるひんやりクールなサロン的リラクゼーション醸成、なども盛り込んで転回起伏をつける辺りのストーリーテラーぶりにも揺るぎないものがあり、説得力は十二分。
01. Prayer
02. Dizengoff
03. From What I've Heard
04. Lidi
05. sombre mind
06. Mayim
07. Longing I
08. Interlude
09. Longing II
10. Spring Hill
藪野 遥佳 Haruka Yabuno (piano) (composition : 01,03,05,06)
細谷 紀彰 Noriaki Hosoya (6 string electric bass) (composition : 02,04,07,08,09,10)
中山 健太郎 Kentaro Nakayama (drums)
2021年2月6日,8月10&11日東京Aobadai Studio録音
レーベル:自主製作
在庫有り
国内自主製作・デジパック仕様CD