★ウォーン・マーシュやウェイン・ショーターの浮遊っぽさに現代感覚を多々加味したような独自の芸風に圧倒的支持を集める、個性派テナーサックスの逸材:マーク・ターナー(1965年米オハイオ州フェアボーン生まれ)の、今回はジェイスン・パルマー(tp)参加のピアノレス・カルテットによる自作曲集。
★一音一音に細やかなニュアンスを宿しながら、落ち着いた調子でじわりじわりと躙り寄ってゆくような半ばサスペンス・タッチの多角的ビート刻みを見せるベース&ドラムのゆとりを残した遊撃、に導かれ、刺激されて、フロント2管の精妙でクールなちょっとレイドバックした折り目正しいアンサンブルや、爽涼でふんわりした浮遊感覚と内なるアグレッシヴさを自然に交錯させるテナー、ピリッと苦味走ったハードボイルドな立ち回りをキメる陰影濃いトランペット、ら各々の個性とスター性溢れるソロ、がスリリングでいて悠然としてもいる含蓄豊かな見せ場を飾った、中々快適かつ密度の高い敢闘内容。
★厳しく険しく引き締まったやや不機嫌そうな面持ちを保ったシリアスめのムードが貫かれるが、曲想としてはバラード的であったり暗さの中にも詩的ロマンティシズムが潤沢に潜んでいたりと、あくまで抒情指向の心象派サスペンス・ミステリーとも云うべき独特の機動型妙演が滑脱に展開され、マーティン(b)&ピンソン(ds)の安定律動力と意表を衝くゲリラ戦法を両立させた巧妙なバックアップにノセられて、ターナー(ts)やパルマー(tp)の、バラード調に始まってアクション趣向でクライマックスを迎える(またはその両方の融合)パターンも散見される道程の中、表情はシビアながら独自の歌心〜メロディー理念にしっかりと立脚した、奔放にして旨味あるインプロヴィゼーションが瑞々しく華やかに冴え渡って、何とも鮮麗だ。
★ターナー(ts)の、物憂げな脱力調子でレイジーに流線形を描く味は幾分ニガめのスムース・リラクシング節や、涼しげな風合いの内側に熱いパッションをたぎらせた激動咆哮など、極めてユニークな美旋律性に根を下ろしつつの、ターナー流の一種のフューチャー・ファンク路線的な妖しいアプローチをあくまで生身のアコースティック・ジャズ形式の中でイキイキと炸裂させる、といった感じのどこまでも流麗でひんやりクーリッシュな吹鳴のあり様が、誠に清新かつ颯爽とした映えを見せていて卓抜で、一方パルマー(tp)の、ダークではあるがターナーに比べるとよりストレートアヘッドな今日流モーダル・ハード・バップの文脈に則ったイメージのある、精悍で毅然とした真剣勝負の大格闘的攻勢、がまた凛々しさ一杯で好インパクト。
Disc 1
Side A:
1. Return From The Stars
2. Terminus
Side B:
1. Bridgetown
2. It's Not Alright With Me
Disc 2
Side C:
1. Nigeria II
2. Waste Land
Side D:
1. Unacceptable
2. Lincoln Heights
Mark Turner (tenor saxophone)
Jason Palmer (trumpet)
Joe Martin (double bass)
Jonathan Pinson (drums)
2019年11月ニューヨークシティのSear Sound Studio録音
レーベル:
ECM
在庫有り
輸入・限定生産・2枚組180g重量盤LP
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