★Via Veneto Jazzや澤野工房、Somethin' Cool、寺島レコード等よりの諸作に好評を集めてきた、イタリアのキャリアある人気個性派ピアニスト:アレッサンドロ・ガラーティ(1966年イタリアのフィレンツェ生まれ)の、今回は各国のトラディッショナルなフォーク・ソングの類をレパートリーとしたトリオによる一編。サウンド・エンジニアは馴染みのステーファノ・アメーリオ。
★折り目正しくきめ細やかでいてゴツッとした固い岩石っぽさも備え、透明感と濃い陰影を表裏一体に湛える端正な骨太タッチのピアノが、ヨーロピアン・リリシストらしい奥深き哀愁やロマンティシズムに溢れるも、決して弾きすぎることなく慎重に音を選び、虚飾を削ぎ落としたかのような「間の妙」を活かした簡潔なメロディック節を紡ぎ、同時に音色の重みや硬質感を際立たせての力学的ダイナミズム表現も豊富に盛り込んでソリッドなグルーヴ&スリルを醸成、トータルとしては詩的・抒情的ではあるものの甘さに流されない翳のあるビタースウィートな幾分かシリアスめの、ある種の荘厳な神秘性を残した心象空間的音景色をニュアンスも十二分に創出する、という制御の利いたノワールな耽美指向プレイをひたすら丹念に繰り出し続けて、幽玄豊かにちょっと渋い華を成し、バネ力満点のベースや剃刀的シャープネスみなぎるドラムらの、トライアングル・インタープレイ調の迫真性フルスロットルで躙り寄る攻めたサポートも、圧倒的サスペンスと力強いノリを的確に体現して全体の完成度を頼もしく高めた、一貫して欧州特有のロマネスクさに富むがそう安心してもいられない生々しい緊迫感をしっかり伴った、バランス絶妙の深遠なポエム世界に仕上げられた高密度内容。
★旋律と和声の端麗さに満ちたトラディッショナル・フォーキーな名曲の数々が、ある時はしっとりと優しくマイルド・センシティヴに、イキイキと感動的に活写され、またある時はダークネスを絡めて険しい表情でミステリアス&サスペンスフルに描き出される、さすがガラーティ(p)の練達した円熟さと清新なる初心とをごく自然に併せ持った独自の語り口の妙なる煌めき、を痛感させられるエレガントで瑞々しい道程が展開され、原曲に対し真摯な敬意を表する一方で結構マイペースな「ガラーティ流」に引き寄せてリブートし、再構築するところもある、その十全に研ぎ澄まされたアドリブ技が、鮮度も抜群のキレを、冴えを見せて素晴らしい。
→暗闇の中を手探りで一歩一歩踏み締めながら神妙に進んでゆく感じの瞑想感仄めくメランコリック・フレージングに、何とも云えぬ物憂くアンニュイな機微が揺らめき移ろうが如くリアルに発揮されていたかと思えば、一転してメロウ・テンダーで甘美な温厚柔和さ全開でゆったりと寛ぐ牧歌的バラードのソフィスティケート・テイストやムーディーな趣、加えて晴れやかな開放感がまた絶品だったりと、そうした何げに表情多彩でメリハリ(と抑制)の効いた節度あるストーリーテラー肌の半ドラマティックな行き方は、中々すっきりと整っていながら含蓄にも富み、聴き込むほどに味わいも増して卓抜だ。
SIDE A
1 Love in Portofino
2 Verde Luna
3 Dear Old Stockholm
4 Almeno tu nell'universo
5 Last Night a Braw Wooer
SIDE B
1 Danny Boy
2 Cancao do Mar
3 The Water is Wide
4 Liten Visa Till Karin
5 Parlami d'amore Mariu
Alessandro Galati (piano)
Guido Zorn (bass)
Andrea Beninati (drums)
2022年1月18日イタリア-ウーディネ県CavaliccoのArtesuono Recording Studios録音
(ミックス、マスタリング:Stefano Amerio)
2022年日本作品
レーベル:
寺島レコード
在庫有り
国内制作・数量限定LP