★この作品に続くセカンド・アルバム(577 Recordsから)が早くも話題を集めている、米テネシー州キングスポート出身の若手女性フリー派テナーサックス奏者:ゾウ・アンバの初リーダー作、=ピアノ・トリオを伴ったカルテットを基本に、うち1曲ではジョン・ゾーン(as)も加わってくるという編成での渾身編。
★適度に脱力した柔らかな鳴り様を呈するテナーが、ゆったりと自然に呼吸するかのような微細に震え揺らめくヴァイブレーションの効きまくったスピリチュアルな咆哮を轟かせておおらかに、エモーショナルに威風堂々たる華を成し、一方、ある時は瞑想的・内省的に落ち着いた調子で情魂を歌い上げ、またある時はワイルド&アナーキーにアブストラクトさ全開でパーカッシヴかつアクロバティカルな大攻勢をかけてくるピアノのドラマティック・プレイ以下、リズム隊の安定したビート形成と浮遊型リアル・インタープレイ調のサスペンス演出とを的確に使い分け、または融和させたサポートも実にシャープに魅力を際立たせた、全般に穏やかな牧歌性と激烈奔放な破壊力とが違和感なく共存した感動的な敢闘内容。
★フリーキー・トーン交じりで獰猛に唸り吠え、絶叫する感じのヴァイオレントなパワー・ミュージック・タイプの野蛮路線もあることはあるが、基本は概ねバラードを根幹としたハートウォーミングな行き方に主眼が置かれた、ややオールド・ファッションともとれるスピリチュアル・ジャズの正統らしい演奏がほぼ貫かれており、明るく晴れ晴れとしたエモーションを結構ストレートに体現するアンバ(ts)の悠然たる歌いっぷりが青嵐の如く輝き、それに比していい意味で幾分かヒネクレた抽象指向の異形なカオス描写に本性を見せるミカ・トーマス(p)の暗躍、が好対照を成しながら拮抗し進んでゆく開放感ある道程をひたすらフレッシュ&エキサイティングに愉しませてくれる。
★アルバート・アイラーを彷彿とさせるとの意見もあるようだが、少なくとも本作に限って総合的に見るなら、アンバ(ts)の、アイラーと云うよりもむしろ往年の山下洋輔トリオにおける坂田明や中村誠一を想起させる、あくまで分かりやすいスピリチュアリティとパッションを顕示し抜く芸風が殊の外好もしく、バンド全体のサウンドも若松孝二や大和屋竺の映画のバックに流れていた山下洋輔グループの音楽に似たイメージが大いにあったりする、辺りのところもまた得難い妙味。
1. Hymn to the Divine Mother
2. O, Sun
3. Northern Path
4. Gardener
5. Holy Din
6. Crossing
7. Satya (ts & p duo)
Zoh Amba (tenor saxophone)
Micah Thomas (piano)
Thomas Morgan (bass except 7)
Joey Baron (drums except 7)
John Zorn (alto saxophone on 5)
2022年アメリカ作品
レーベル:
Tzadik
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デジパック仕様CD