★このGeneration Jazz Project Recordsから着々とアルバムを発表して評判を上げてきた、サンクトペテルブルクを拠点として活動するロシアの正統派サックス(アルト&テナー)奏者:イゴール・トカレフの、今作は、顔ぶれの異なる2つの2管クインテットによる一編。
★サックスとトランペットの息の合ったカラフルで重層的なアンサンブルが雄壮に旗めいた後、ちょっとレイジー・スモーキーでブルースの旨味濃い軽やかなアルトの舞い、或いはより重厚でハード・ドライヴ感溢れるテナーのコクの利いた唸り、がゆとりを残して泰然と華を成し、一方、ピリッとした鋭敏な立ち回りで凛々しく攻勢を掛けてくるトランペットや、硬質で陰影濃く角張った石つぶてをぶつけてくるかのようなスクエアー・バピッシュなピアノ、らの追い上げ様もしっかりテイスティー・グルーヴィーに魅力を際立たせた、全体を通じ1950年代頃のモダン・ジャズ黄金期を想起させる純正ハード・バップ・タイプのアーシー&ソリッドな快演が貫かれて、スカッと清やかに乗せ、昂揚させてくれる会心打内容。
★歌心とスイング感に潔くポイントを絞り込み、伝統的なブルース・フィーリングやバップ・スピリットも十全に備わった、極めて「ハード・バップらしいハード・バップ」演奏が鷹揚かつ和やかそして溌溂と展開され、これぞ粋渋道の真髄とも云うべき歯切れよいノリと美味さ格別な道程の中で、トカレフ(as,ts)を筆頭として銘々が代わる代わるフロントに躍り出ては中々簡潔で要点を押さえた実に鮮やかなアドリブ・ソロを、ひたすら嬉々として愉しげに、しかも節度と品格をもって流麗に繰り出し、殊の外明るく温もり溢れる晴れ晴れとした大豊饒地帯を創出していて、全くゴキゲンだ。
★トカレフ(as,ts)の、常に一定の余裕や脱力感、仄かなけだるさを漂わせながらレイドバックしたスムースなブロウを決め、力強いダイナミズムとユルいリラクゼーションが渾然一体化した独自のメロウ・グルーヴ世界を形作る、哀愁とイナセさ一杯な語り口が堂々とおおおらかに冴え渡っており、アルトでは音色そのもののキュッと引き締まったハイトーンさが効いて精悍毅然そうな佇まいが醸成され、テナーでは微妙にプスプスと息漏れするハスキーな掠れ具合が絶妙のルーズ感や物憂き趣を齎す、という巧まずしてドラマティックな表情変化をも見せた終始滑らかで悠々とした泳ぎっぷりが最高にイカしている。
★また、硬質敏捷なハードボイルド・バッパーたるダイナミック・アクションに本領を揮うトランペット二人のうちMeleshikhinの方はチョイまろやかなロマンティックめのアプローチにも妙味があったり、同じくいずれも堅牢骨太な岩石転がし的バップ技に燻し銀の真価を見せるピアノ二者だが、Hayrapetyanの方はモンキッシュな行き方も織り混ぜたりしてよりシャープな尖った個性を打ち出していたりと、顔ぶれ交代による対比対照の妙も興趣十二分。
1. Suburban Avenue
2. Jellyfish
3. Winter In Amsterdam
4. Yet Another Blues
5. Thoughts Of A Sentimental Man
6. How About Some Tea?
7. Skipping Rope
8. C.'s Flight
9. Skipping Rope (alternative take)
Egor Tokarev (alto saxophone, tenor saxophone, compose)
#1,#2,#5-#8:
Mikhail Meleshikhin (trumpet)
Stanislav Chigadaev (piano)
Mikhail Fominykh (double bass)
Marat Beatkulov (drums)
#3,#4,#9:
Ivan Vasilyev (trumpet)
Vahagn Hayrapetyan (piano)
Phillipp Meshcheryakov (double bass)
Andrey Ivanov (drums)
2021年6月23日&24日"Melodiya" Petersburg Recording Studio録音
レーベル:
Generation Jazz Project Records(自主製作)
在庫有り
デジパック仕様CD(※日本語帯付き)