★お馴染み抒情派ピアノの独創的名匠:フレッド・ハーシュ(1955年オハイオ州シンシナティ生まれ)の、今回は、トリオに弦楽四重奏団を嚙ませての自作組曲をメインとした一編。
★端正で透明感や潤いに富んだ滑らかな風合いと、角張った鋭いキレを呈する硬質骨太さ、を併せ持ったきめ濃やかなクリスタル的タッチのピアノが、落ち着いた調子で慎重に音を選びながらエレガント&ロマンティックな甘美さ溢れるメロディック・フレーズをしっとりと優しく紡いで、瑞々しく煌めくような雅やかでちょっと儚げな華を微細に成し、一方、チェンバー色濃く厚み・重層性充分なストリングスの大きくウネり波打つ調べが室内楽的クラシカル・ムードを荘厳に醸成、加えてベース&ドラムのバップ・グルーヴ感に満ちたスインギーな躍動も、上手い按配でストリングスと鬩ぎ合いつつ力強いノリと粋渋っぽい吟醸味を頼もしく齎した、全体を通じ繊細な端麗美に富むと同時に適宜意表を衝く起伏メリハリや迫真スリルも自ずと備わった、何げに極めて密度の高い敢闘内容。
★現代流のリリカル・バピッシュな耽美浪漫主義を志向するピアノ・トリオ演奏と、深遠で典雅なクラシック寄りのサロン・ミュージックらしさを結構太々と雄渾に醸し出す弦楽四重奏、とがコントラスト感と融和性を混在させつつフレッシュ・スリリングに絡み合い、その両者の橋渡し役であり主役であるハーシュ(p)の、神妙かつセンシティヴに機微・ニュアンスをじっくり掬い取ってゆくような、それでいて肩の力は巧まず抜けていて、リキみのない自然体調子で長年磨き抜いてきた「得意ワザ」を伸び伸びと愉しそうに披露するようでもある、何より旋律の美しさと奥深い詩情を重視したメロウ&テンダーなアドリブ・プレイが悠然と冴えを、熟達ぶりを見せていて素晴らしい。
→エヴァンスを出発点としながらよりヒンヤリした冷涼感や折り目正しいエレガンスを強化した、動き・凹凸のあるミディアム・テンポのスウィンギン・アクション・バラード調であったり、ルイス・ヴァン・ダイクがクラシック寄りのアプローチをやった時とかにもどこか似たところのあるセミ・チェンバー的な筆運びであったり、更には、ちょいパーカッシヴで半幾何学的なヒーリング・ミュージック〜ニューエイジ系っぽい行き方や、半ばアブストラクトなフリーめ或いはモンクに接近したハードで変則リズミカルな殺陣的立ち回りなど、中々振り幅大きくヴァラエティーに富んだ手練の至芸があくまで軽々と、嬉々溌溂とした息遣いで次々に繰り出されて誠に爽快だ。
The Sati Suite
1. Begin Again
2. Awakened Heart (p & string quartet)
3. Breath by Breath
4. Monkey Mind
5. Rising, Falling
6. Mara (omit drums)
7. Know That You Are
8. Worldly Winds (string quartet only)
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9. Pastorale (homáge a Robert Schumann)
Fred Hersch (piano except 7)
Drew Gress (bass except 2, 7)
Jochen Rüeckert (drums except 2, 6, 7)
Rogerio Boccato (percussion on 6)
with
Crosby Street String Quartet:
Joyce Hammann (violin)
Laura Seaton (violin)
Lois Martin (viola)
Jody Redhage Ferber (cello)
2021年8月24-25日ニューヨーク市クイーンズ区アストリアのThe Samurai Hotel Studios録音
レーベル:
Palmetto (国内仕様:Free Flying)
*8頁ブックレット
フレッド・ハーシュによるセルフライナーノーツ / 翻訳
書き下ろしオリジナルライナーノーツを収録
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